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第1章
31話 複雑な気持ち
しおりを挟むホテルに戻ったスミは携帯を手に取るとシュンにワンコールをして切った。
ワンコールならいいよね…
20分後、シュンから電話がかかって来た。
「もしもし」
「スミさん…」
「今、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。それより家に帰って話せた?大丈夫だった?」
「…近いうち話聞いてもらいたい…」
「…うん。明日は遅くなるから明後日なら」
「わかった」
「19時には行けると思う」
「うん」
「あの店…行く?」
「あ…私、今家出てて。ホテル暮らししてるの…」
「え…」
「プリセスホテルなんだけど…」
「プリセスに泊まってるの?」
家からそこまで遠くない5つ星の高級ホテルだった。
「だから、出来たらホテル内で…」
「うん。ホテルの30階にレストランあるからそこでいい?」
「うん」
当日19時になり、先にスミがレストランに入って待っているとすぐにシュンが来た。
「お待たせ」
「先に適当に頼んどいたよ」
2人はワインを飲みながら食事をする。
「これ、ありがとう。助かりました」
シュンから借りていた1万円を渡した。
「よかったのに。それよりいつからこのホテルに?」
「あの日、主人と話した日から…」
「そっか。あの日連絡なかったから心配したよ。ちゃんと話し合えたの?」
「別れたいって言ったけど聞く耳持ってくれなかった。絶対離婚しないって。だから家出て来た…」
「話って、離婚の話をしに行ったの?」
「うん…もう主人とはやっていけない…」
「…それでご主人は離婚しないって言ってるんだね」
「向こうにはそれなりな理由があって…」
「理由って?」
「話せる時が来たら、その時話すね」
「…うん」
「しばらくはこの生活が続きそう…」
「何でこのホテルなの?高いでしょ?」
「あ…近かったから」
「じゃ、俺がホテル代出すから」
「そんないいよ‼︎ちゃんとお金はあるから」
「でも…」
「言っとくけど主人のお金じゃないからね。ちゃんと私のお金だから」
「じゃ、必要になったらいつでも言ってね」
「ありがとう」
「ワイン、もう1本頼もうか」
「うん」
「…スミ」
「えっ」
突然呼び捨てされてスミはドキッとした。
「呼び捨てで呼んでいい?」
「う、うん…いいよ」
「スミも俺のこと呼び捨てしていいよ。シュンさんって言いにくそうだし」
「確かに言いにくいかも…」
「呼んでみて」
「シ…シュン」
ヤバい…可愛すぎる…
友達になった2人だけど、友達として(?)2人の距離は縮まっていった。
「私が誘ったのに支払ってくれてありがとう」
「そんなのいいから」
「お酒飲んだけど車でしょ?どうするの?」
「運転代行に電話してみる」
シュンが電話している姿をスミはじっと見ていた。
シュンって本当イケメンだな…
外見だけじゃなく内面も…
「今混み合ってて1時間かかるみたい」
「1時間⁈どうするの?」
「車で待ってる」
「もし良ければ部屋で待つ?」
「え…いいの?」
「うん…」
2人はホテルの部屋に行った。
「シュンって運転手は雇ってないの?」
「いるよ」
「運転手に迎えに来てもらわないんだね」
「仕事以外は20時以降頼まないよ。縛りつけたくないし」
「秘書は?」
「その運転手が秘書だよ」
「そっか。シュンって社員に信頼されてるでしょ?」
「そうかなぁ…わかんない」
「信頼されてると思うよ」
「ありがとう」
「お茶、持ってくるね」
スミが立ち上がり冷蔵庫まで行こうとすると段差につまづき転びそうになった。
シュンはとっさにスミを支えた。
「…大丈夫?」
「う、うん。ありがとう」
2人は至近距離で見つめ合うが、シュンの携帯が鳴り慌てて離れた。
「わかりました。すぐ行きます」
「もう来たって?」
「うん。早かったなぁ」
時計を見ると1時間経っていた。
「もう1時間経ってたんだね⁈スミと居ると時間経つの早いな」
「本当だね」
「じゃ行くね」
「うん」
シュンが行った後もスミはドキドキが止まらなかった。
エレベーターに乗ったシュンもドキドキしていた。
ダメだ…友達なんだから…
気持ち抑えないと!!
シュンは自分にそう言い聞かせていた。
その頃、裕二は家に帰っていた。
その途中、スミが泊まっているホテルの前を通っていると裕二は車を停めた。
あれって…地曽田…?
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