プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

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第1章

29話 絶対拒否

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翌日、スミは家に戻り裕二の帰りを待っていた。
割れた食器は片付けてあった。
携帯の電源を入れた途端、裕二から着信が入った。


「もしもし⁈もしもしスミ‼︎」

「…うん」

「今どこ⁈」

「家」

「家⁈すぐに帰るから待っててくれ。どこへも行くなよ‼︎」

「わかった」


18時40分、裕二は息を切らして帰って来てスミを見た瞬間抱きしめた。


「スミ‼︎俺が悪かったよ。もう2度とあんな事はしない」


スミは裕二を突き放した。


「ちょっと座って」

「あ、うん」 


2人はソファーに座った。


「2日間どこに居たんだよ。電話も出ないし心配したんだからな」

「裕二…」

「何?」

「私、もう無理」

「え?何が?」

「もう裕二と一緒に居られない。ううん…居たくない」

「な、何言ってんだよ」

「別れましょ」

「…離婚したいってことか?」

「うん」

「嫌だ…何でだよ!俺と秘書の事まだ疑ってんのか?それともバイト辞めさせたから?暴れたりしたからか?」

「…全部含めてよ‼︎」

「秘書のことはスミが誤解してるだけだし、店で暴れたのはスミが辞めたって嘘ついてたからだろ。それに、させてくれないし…スミだって悪いじゃないか‼︎」

「そうだね…とにかくもう裕二とは一緒に居たくないの。離婚して」

「絶対、離婚しない‼︎」

「裕二‼︎」

「会社はどうなる?お義父さんの遺言書に裕二に任せたいって書いてあったから俺が今社長してるけど、俺が辞めたらお義父さんを裏切ることになるだろ」

「それは…そうだけど…でも!」

「お義父さんの為にも俺たちは離婚しちゃダメなんだ。そういう事でいいな!」

「…私、明日実家に行って来る」

「変なこと言うなよ」


スミは父が亡くなった際、遺言書をきちんと見ていなかったのでもう一度きちんと遺言書を確認しようと思った。


「それと…しばらくホテルに泊まるから」

「は?何言ってんだ」

「こんな気持ちのまま一緒に居られない…自分のお金持って行くし裕二には迷惑かけないからいいでしょ?」

「じゃあ電話くらいは出ろよ。あまり長くはダメだからな。あと絶対に離婚はしないからな‼︎」


スミは荷物をまとめて家を出るとタクシーで近くのホテルに行った。

ホテルに着きスミはシュンに電話をかけようと携帯を手に取るが、時刻は20時を過ぎていたので自宅に居ると思って電話することが出来なかった。


シュンはスミから連絡があるかも知れないと思いシャワー中も携帯を隠して入り、その後も携帯を手離さなかった。
 
そんなシュンを見て、由希は不信に思っていた。


シュンの家は会長である父親と継母と2世帯住宅にして住んでいる。
隣に住んでいるにも関わらず両親とはほとんど会わない。
シュンは継母と仲が悪いからだ。
継母はシュンの母親が亡くなってすぐに父親と入籍した。
後で分かった事だが、父親の愛人だったのだ。
それが分かりシュンは一線引いているのだ。



翌日午後、スミは実家に帰った。
スミの実家も母1人で暮らしているが家政婦を雇うくらい大きな家だ。
スミの母は会長夫人でもあった為しっかりしている。


「スミ、急にどうしたの?めったに帰って来ないのに」

「うん…ちょっと」

「子供でも出来た?」

「ごめん…違う…」

「じゃ何?」

「お父さんの遺言書、見せて欲しいの」

「遺言書…?どうして?」

「あの時、私ちゃんと見てなかったから。急にお父さんのこと思い出して…」

「いいけど…ちょっと待ってて。今持って来るから」

「うん」


母親は父の遺言書を持って来た。


「はい、これ…」

「ありがとう」


スミは1枚の紙を開いて目を通した。



私の亡き後、柳本グループは娘スミの夫、岡田裕二に託す。
その代わり岡田裕二は柳本家の養子になり柳本裕二になること。


確かにはっきり書いてある…


「何で同じとこばっかり見てるの?」

「あ…うん」

「息子が居れば息子に託すはずだったけど…うちには息子が居ないからね。スミが社長になればよかったけど、スミには自由に生きて欲しかったんでしょうね。お父さんはスミに甘かったから」

「…うん」

「裕二さんにしっかり頑張ってもらわないとね」

「でも…お父さんの字ってこんなんだったっけ?」

「え?」

「もうちょっと達筆だったような…」

「体調悪い時に書いたからでしょ…」

「そっか…」

「他にも何か?」

「え…う…ん。もし私と裕二が離婚することになったら…」

「え⁈離婚⁈そんなのダメに決まってるじゃない‼︎」

「ど、どうして?」

「誰が会社をみるのよ!それに裕二さんに会社を任せたのはお父さんなのよ」

「…そうよね」

「あなたたち、まさか…」

「聞いてみただけよ」

「お父さんが立ち上げた会社なんだからしっかり守らないと。いずれは裕二さんに会長になってもらうつもりだから、それまでは社長として頑張ってもらわないとね」

「、、、、」

「念の為に言っておくけど、離婚なんて事になると会社にとって大ダメージだからね」

「わかってる。わかってるけど…」

「何かあったの?」

「色々あった。今裕二と一緒に居たくないくらい気持ちがないんだけど」

「夫婦になると色々あるのよ。耐えなさい。建前だけの夫婦でいいから。別居しても離婚だけは絶対ダメよ‼︎」

「、、、、」

「スミ、わかったわね?」

「…そろそろ帰るね」

「スミ?わかった?」

「…はい」

「今度裕二さんと来なさい」

「…うん」

「お母さん…遺言書コピーして持っててもいい?」

「え?いいけど…」


何故か遺言書が気になったスミはコピーして持ち帰った。


ホテルに戻ったスミはソファーに横になって遺言書を見ていた。


何で裕二なの…?
お父さんは私と裕二が結婚して半年で亡くなったし、そこまで裕二とは信頼関係があったとは思えない…
お父さん用心深かったのに…
裕二は私の知らないとこでお父さんの病室に会いに行ってたのかな…
でも、どうしたらいいの…
お母さんまで…
いったいいつまでこの生活を続けるの…


スミはどうしていいかわからなかった。









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