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第1章
27話 本当の気持ち
しおりを挟むそしてこの日の夜、夕食を終えた裕二はウイスキーを次々と飲んでいた。
「裕二、飲み過ぎじゃない?」
「今日は酒が進むんだ」
裕二は目が虚ろになり酔っていた。
すると裕二は食器を洗っているスミを後ろから抱きしめた。
「ちょっと裕二!」
「いいだろ」
「洗い物してるでしょ!」
カチンときた裕二はスミが持っていたお皿を床に投げつけ割った。
え…
「今日は拒ませないからなっ‼︎」
「やめてよ!こんなの嫌っ‼︎」
裕二はスミを床に押し倒しブラウスのボタンを引きちぎった。
スミは泣きながら必死に抵抗する。
その時スミの手に割れたお皿の破片が刺さり血が流れてきた。
「痛っ」
裕二は慌ててスミを起こした。
「スミっ!大丈夫か⁈」
スミは裕二を突き放し、携帯を手にして家を飛び出して行った。
「スミっ!!」
クソッ、何でこうなるんだ‼︎
スミは必死で走り、公園に行った。
気付いたらスミはシュンに電話していたが、以前奥さんが電話に出た事を思い出しすぐ切った。
シュンから折り返し電話がかかってきた。
シュンさん…
「もしもしスミさん?」
「…シュンさん」
「どうしたんですか⁈」
「私…私…」
「今どこですか?」
「公園です…」
「すぐ行きますので待ってて下さい」
シュンは電話を切ると急いで公園に向かった。
5分後、シュンはベンチに座っているスミを見つけた。
「…え」
スミはブラウスのボタンはちぎれ手が血だらけになっていた。
「シュンさん…」
シュンは自分のジャケットを脱ぐとスミに羽織らせた。
「この手はどうしたんですか⁈ケガしてるじゃないですか‼︎」
スミは泣き出した。
「スミさん?と…とにかく止血しないと」
シュンはハンカチを取り出しスミの手にきつく縛った。
「病院行きましょう」
「…大丈夫です」
「でも…」
「すみません。こんな姿ばかり見せてしまって」
「そんなのはどうだっていい。いったい何があったんですか⁈」
「それは…それは…」
思い出すと涙が止まらなくなった。
シュンは思わずスミを抱きしめた。
「無理に…言わなくていいから…」
「ごめんなさい…」
「家には…帰りますか?」
スミは顔を左右に振った。
「ちょっとだけ待ってて下さい」
シュンは家に車を取りに帰った。
急いで公園に戻るとスミを車に乗せた。
「どこに行くんですか?」
「病院です。少し遠いですが夜間でも診てくれるとこがありますので」
シュンさん…
30分後、病院に着くとシュンは後部座席からトレーナーを取りスミに渡した。
「これ着て下さい」
「…ありがとうございます」
スミはブラウスの上からシュンの大きめのトレーナーを着て診察室に入った。
手当てが終わり車に戻った。
「傷口が深くなくて良かった…」
「本当にありがとうございます」
「じゃ行きましょうか」
「…はい」
どこに行くんだろう…
「あの…この前はすみませんでした」
「この前って?」
「自分から公園に誘っておいて行かなかったから…」
「あー」
「シュンさん行ったんですよね?」
「あ、はい。でもすぐ帰りました」
「本当にごめんなさい」
「大丈夫ですよ。あの日スミさんは行かなかったんですか?それとも行けなかったんですか?」
「行けなかったんです。電話したけど電源が入ってなかったみたいだから…」
「あ…電源切ってました。すみません」
「どうしても謝りたくて翌朝電話したんですが、奥さんが出たので何も言わず切ってしまいました。すみません…」
「妻が…?そ、そうですか…」
あの日の朝、携帯の位置が変わっていた事を思い出しシュンは納得した。
「すみません。電話してくれてたなんて知らずに…」
「電話もかけづらかったし謝ることも出来ず1週間も経ってしまって…申し訳なくて…」
「あの日…何かあったんでしょ?バイトも辞めたし。あんなにコーヒーショップの仕事が好きだったはずなのにどうして…」
「…主人にバレたんです。まだ辞めてなかった事がバレて、バイト先に主人が来て店で暴れて…辞めざる終えなかったんです…」
「店で暴れたって…どうしてそこまで」
「シュンさんの会社の近くでバイトしてたのが1番の原因です」
「え?どうして?もしかしてこの前の件でまだ疑われてるんですか?」
「いいえ。主人は勝手に地曽田グループをライバルだと思ってて。だから特にシュンさんの事も嫌がってて」
「…そうですか。何か色々と納得しました」
「ライバルにもならないのにすみません」
シュンは駐車場に車を停めた。
「着きました」
「ここは?」
「僕の会社が経営するホテルです」
「ホテル⁈」
「あ、もちろんスミさんだけ泊まって下さい。ちょうど1部屋空いてたみたいなので。フロントで名前言ったら鍵くれますから」
「シュンさん、どうしてそこまで親切にしてくれるんですか?」
「…僕にもわかりません」
スミはシュンに対して申し訳ない気持ちとシュンへの想いに気付き、下を向いて黙っていた。
「あの…1つ聞いていいですか?」
「…何ですか?」
「もしかして…今日の事もご主人が関わってますか?」
スミが黙ったまま頷くとシュンの顔色が変わった。
「でも、手のケガは自分のせいです」
「どうして割れたガラスでケガするんですか?それに服だってボロボロに…え…まさか」
「ハハハ…夫婦なのに変ですよね。でも…どうしても私の体が受け付けないんです…」
全てを話してしまったスミは恥ずかしさのあまりシュンを見れなかった。
シュンはハンドルを力一杯握った。
「あんまり人のことを悪く言いたくないけど…ご主人…クズですね。いや…クズ以下だ」
スミは何も言えなかった。
「奥さんを何だと思ってるんだ。自分は好き放題して」
「シュンさん…」
シュンは黙り込みしばらく沈黙が続いた。
「あのっ、部屋用意してくれてありがとうございます。そろそろ行きますね」
シュンは車を降り助手席のドアを開けた。
「ありがとうございます」
「あの日…」
「え?」
「あの日、公園に行った時すぐに帰ったって言ったけど…本当はずっと待ってました」
「えっ、ずっと?」
「待ってる間色々考えました。好きな人を待つのって苦にならずにずっと待っていられるんですね」
「…え?」
シュンはスミに優しくキスをした。
「お互い結婚してるし、今まで一線引いてたけど…それにこんなこと言える立場じゃないけど…スミさんのこと、どうしようもないくらい…好きみたいです」
「…シュンさん。私も…です」
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