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第1章
25話 本性
しおりを挟むこの日の夜、スミと裕二はベッドに入った。
スミが眠りにつこうとすると裕二が体を触ってきた。
「なっ、何?」
「今日はいいよな?」
「、、、、、」
スミは葛藤した。
服を脱がされ裕二がキスをしてこようとした瞬間、スミは裕二を突き飛ばした。
「イヤッ」
「またかよっ‼︎いつまで拒むんだよ‼︎」
「…ごめん。そういう気分じゃない」
「この前はアレで出来ない。アレが終わったら次はそういう気分じゃない…何だよそれ‼︎」
「本当ごめん」
「スミはしなくてもいいかも知れないけど、こっちの事も考えろよ!どうにかなりそうだよ‼︎」
裕二は怒って寝室を飛び出しソファーで寝た。
スミは気付いた。
秘書と不倫してたからっていうのもあるがスミの体自体が裕二を受け付けないって事を…
翌朝、裕二は黙って会社に行った。
もう出勤したのか…
怒ってるよね…
さすがにもう拒めない…
我慢してでも受け入れなきゃ…
スミは今夜は…と覚悟を決めた。
会社に着いた裕二はアキを社長室に呼び出した。
「どうされましたか?」
すると突然、裕二はアキを抱きしめた。
「えっ、ど、どうしたの⁈」
「アキ、今日仕事終わったらホテル行こう」
「本当⁈」
「うん」
「裕二さん‼︎嬉しい!」
もう我慢出来ない‼︎
今日もスミに拒まれるくらいならアキと寝ればいい…
その為の女だから…
スミにはバレなければいいんだ…
仕事が終わると2人はホテルに行った。
「21時か…」
「今日の裕二さん凄かった‼︎」
「久々だからな。あと何回しようか」
「そうね~とりあえず飲まない?」
「そうだな。酔ってもっと燃えよう」
2人はワインを1本空けウイスキーを飲み出した。
「何だか私、酔ってきたかも」
「アキ、酒弱くなったか?」
「そうみたい…あの日から…」
「あの日から?」
「いや…何でもない」
「まぁアキはベロベロに酔ってもいいよ。俺さえしっかりしておけばいいし」
「そう言えばさっき久々だったって言ってたけど、奥さんとはやってないのね」
「…うん」
「安心した」
「あいつ、毎回拒みやがって」
「え?拒まれたって…じゃあ裕二さんは奥さんを求めてたの⁈」
「当たり前だろ、夫婦なんだから」
「え…」
アキは頭に血が上った瞬間、スミが言っていた事を思い出した。
スミの弱みだ…
「あ~、そう言えば前にコーヒーショップで奥さん見たって言ったでしょ。見間違いじゃなかったよ」
「え…会ったのか?」
「うん」
「そうだよ。バイトしてたみたいだけど辞めたよ。あんなとこで働く必要ないからな」
「え?辞めた?でも会ったよ」
「辞める前に会ったんだろ」
「昨日だけど。私昨日外出したでしょ?あそこの近くに用事があって、たまたまコーヒーショップの前通ったら奥さん居たよ」
「昨日?う、嘘だろ?」
「だって話したもん。あっ、ちゃんと言っといたからね。私と裕二さんは何もないって事」
裕二はグラスを投げつけた。
「ちょっ、ちょっと‼︎何⁈どうしたの⁈」
「スミの奴…騙しやがって…」
「えっ、どうして怒ってるの?騙す?どういう事?」
「アキ、今日は帰らないからな‼︎」
「本当?やったぁ~」
その頃、覚悟を決めていたスミは家で度数の高いお酒を飲んで裕二の帰りを待っていた。
とてもシラフでは裕二と出来ないと思ったので酔うしかなかった。
それにしても裕二遅いな…
連絡もないし…
まさか田中アキと…?
いや、そんなことはない…
時刻は0時を回り、酔ったスミはいつの間にか寝てしまった。
翌朝スミが目を覚ますと裕二は居なかった。
え…帰って来てないの…?
会社で寝たのかな…
以前のように深く考えずにスミはバイトに行った。
14時過ぎ、来店客のピークが過ぎて店長とスミがゆっくりしていると勢いよくドアが開いた。
「いらっしゃ…い…」
え⁈裕二⁈
裕二はスミの腕を掴んだ。
「こっち来い‼︎」
「いやっ、やめて」
「やめて下さい」
「お前は関係ないだろ!嘘つきやがって‼︎」
裕二は店長を突き飛ばした。
「店長、大丈夫ですか⁈」
「早く来い‼︎」
「本当にやめて!裕二…落ち着いて!」
「辞めたって事信じた俺がバカだったよ。今すぐ辞めさせてやる‼︎」
「ごめんなさい…でも辞めたくない‼︎お願い裕二!ここで働きたいの‼︎」
「ダメだ‼︎地曽田グループの近くなんか‼︎」
「そんなっ、関係ないでしょ。お願い!ここで働かせて」
「そんなに働きたいなら他を探せ。ここは絶対ダメだ‼︎」
「ここがいいの‼︎」
「だからダメだって言ってるだろ!!」
裕二の怒りは絶頂に達し、店のテーブルや椅子を倒し暴れた。
スミと店長は必死で裕二を止めるが手に負えなかった。
「裕二やめて‼︎わかったから‼︎」
「わかったって⁈」
「辞めるから…」
「スミちゃん…」
裕二はようやく手を止めた。
「初めからそう言えばいいんだよ。店長さん、そういう事だから。スミ、行くぞ」
「店長…本当にすみません。ご迷惑をおかけしました。本当に…すみません」
スミは泣きながら店長に頭を下げた。
そんなスミを店長は笑顔で見送った。
裕二はスミを車に乗せ家に向かった。
スミは店長に申し訳ない気持ちで涙が止まらなかった。
「俺がバイト探してやるよ。短時間で高収入なとこ」
「、、、、、」
「家の近くがいいな。どんな仕事がいいんだ?」
「、、、」
「おい‼︎聞いてんのか⁈いつまで泣いてんだよ!」
「あそこまでしなくていいでしょ⁈」
「あそこまでさせたのはお前のせいだよ。辞めたとか嘘つきやがって。店長もグルになって俺をバカにしやがって」
「一体何でわかったのよ!秘書に聞いたの⁈」
「どうだっていいだろ」
田中アキしかいない…
あれだけ内緒にするように言ったのに…
家に着くと裕二はスミを降ろし会社に戻った。
スミはすぐ店長に電話した。
「もしもし」
「店長…柳本です」
「スミちゃん‼︎大丈夫⁈」
「はい…本当にご迷惑おかけしてすみませんでした。主人は仕事に行ったので今から片付けに行きます」
「大丈夫だよ。今日はもう閉めるから」
「…すみません」
「それよりスミちゃんが心配だよ。ご主人いつもあんな感じなの?」
「いいえ。あんな主人初めて見ました。私は大丈夫です」
「ならいいけど…俺がご主人にスミちゃん辞めたって言ったせいで…ごめんね」
「店長は何も悪くありません。そうさせたのは私なので」
「まぁ…色々あるんだろうけど、スミちゃん元気でね。もっと一緒に働きたかったけど」
「店長もお元気で。短い期間でしたが今までお世話になりました。こんな私を雇ってくれて感謝してます。ありがとうございました」
「いつでも遊びにおいでね」
「はい。ありがとうございました」
電話を切ったスミは何もする気が起こらずベッドに横になった。
あれだけ口止めしたのに裕二に教えた田中アキと、店の中を荒らした裕二に対する怒りが収まらなかった。
何がいけないのよ…
ただ地曽田グループの近くだって事だけで…
働くくらいいいじゃない…
ちゃんと家の事はしてたのに…
スミは家の事を何もしたくなかった。
ふとシュンのことを思い出した。
シュンの携帯番号が書いてあるメモを取り出し、気付いた時には番号を押していた。
「もしもし?」
えっ、私…電話してしまった…?
「もしもし?どちら様ですか?」
「あっ…あの…」
「…スミさん?」
「はっ、はい」
「どうしました⁈今バイト中じゃ?」
「それが…辞めたんです…」
「え…辞めた?」
「あのっ、今日19時くらいにあの公園にいますので、もし…」
「わかりました。行きます」
「…シュンさん」
「もうすぐ会議なので切りますね。あっ、電話してくれてありがとうございます」
そう言うとシュンは電話を切った。
辛い時、どうしてシュンさんのこと思い出すんだろ…
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