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第1章
24話 弱み
しおりを挟むそれから1週間が経った。
裕二とスミは特に何事もなく安定した生活を送っていた。
シュンはあれから店に来ていない。
裕二から避けられてるアキは限界がきて社長室で裕二と話していた。
「何で会ってくれないの⁈」
「もうちょっと待ってくれ」
「もうちょっとっていつまでよ‼︎」
「妻から信用失ってるんだ。今少しずつ取り戻してるとこだから」
「じゃ奥さんと上手くいってるって事?それで信用取り戻したら私と会うって事⁈」
「そうだ」
「大体、何でそこまで奥さんにこだわるの?別れればいい事なのに!何か弱みでも握られてるの?」
「そんなんじゃない…」
スミの親から会社を譲り受けて、未だに援助を受けているなんてとても言えない…
裕二はスミの亡き父の会社を譲り受けているのだ。
株や資金はスミの母親が握っているので、スミと離婚したら裕二は全てを失ってしまうのだ。
「じゃあ何でよ!私、絶対に裕二と別れないからね‼︎」
信用取り戻したら会うって…
これじゃただの都合のいい女じゃん…
あ…そうだ…
アキはいい事を考えついた。
「私、ちょっと外出して来ていい?夕方までには帰るから」
「…いいけど」
アキはスミの働くコーヒーショップに行った。
「いらっしゃいま…せ」
え…田中アキ⁈
「やっぱり奥様だったんですね~」
「えっ?」
「この前、奥様がこの店のシャッター閉めてる所をたまたま見たんです。見間違いじゃなかった」
じゃあ、裕二がここで働いてるの知ったのは…田中アキが教えたのね⁈
「ちょっとここではあれなんで外で話しましょう」
スミはアキと店の外に出た。
「でもまさか社長の奥様がバイトしてるなんてびっくりです‼︎」
「あのっ、主人には言わないで欲しいんですが」
「え?社長は奥様がバイトしてるの知らないんですか?」
「内緒にしてたんです。だけど誰から聞いたか知りませんがバレてしまって。辞めた事になってるので主人には言わないで下さい。お願いします‼︎」
へぇ~そうなんだ~なるほどねっ
私は奥さんの弱みを握れるって事ねっ
「わかりました。絶対に社長には言いません」
「ありがとうございます」
裕二の不倫相手なんかにお礼言うとは思わなかった。
「それと、今日は奥様に話があって」
「え…何ですか?」
「奥様は私と社長との事を疑ってるようですが何もありませんので」
「…そっ、そうですか」
「だから社長を信じてあげて下さい」
「は…はい」
何もない訳ない…ラインも見たし…
でもこんな事わざわざ言いに来るなんて…
本当に別れたのかな…
そこに会社から出てきたシュンが、スミとアキが話しているのに気が付いて立ち止まった。
何でスミさんとあの秘書が…
「それじゃ、そろそろ会社に戻ります」
「はい。あとしつこいようですが裕二には私がまだここでバイトしてること絶対に言わないで下さいね」
「わかってます。信じて下さい」
スミはホッとして店に戻った。
言うか言わないかは、裕二さんの態度次第だけどね…
アキが会社に戻ろうとすると、シュンがアキの腕を掴んだ。
「え?」
「お久しぶりです。田中さん」
ち、地曽田社長っ⁈
わっっ、ヤバいっっ
「お、お久しぶりです。あ、あの…契約書…お持ちするのすっかり忘れてました」
「契約書?あー、表参道の土地の件ですね。それは嘘じゃなかったんですか?」
「え…?」
「柳本社長の秘書の田中アキさん」
え…バレてたの…⁇
「あ…あの…す、すみませんでした」
「どういう事ですか⁈偽の名刺まで作って」
「それは…その…本当にすみません」
「言いたくないならいいです。時間のムダだっただけで別に被害にあった訳じゃないし。それよりこんな所で何してるんですか?あの店の人と話してましたけど」
「あっ、別に…ちょっとした知り合いと話してただけです」
そう言うとアキはシュンの前から逃げるように立ち去った。
気になったシュンは久しぶりにコーヒーショップに入った。
「シュンさん⁈」
「お久しぶりです」
「は、はい」
「カフェラテ…下さい」
「カフェラテ?あ、はい」
「スミさん」
「え?」
「大丈夫ですか?」
「何が…ですか?」
「色々と…」
「はい…大丈夫です」
スミは笑顔で言った。
「それなら良かった」
シュンはカフェラテを持って店を出た。
アキはタクシーで会社に戻るが冷静ではいられなかった。
何でバレたの⁈
調べられたかな…
どうしよう…
バレてたこと裕二さんには言えない…
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