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第1章
23話 本来の形
しおりを挟む翌日、バイトに行ったスミは勤務時間を1時間早めに終わりたいと店長に頼んだ。
「じゃ、18時で上がるって事?」
「しばらくはそうしてもらいたいんです。主人が19時には帰って来るので、それまでには家に居ないと…」
「…そうか」
「辞めたくないんです。バレたらまた主人はここに来て次は容赦しないだろうし」
「了解。スミちゃんにはずっと働いて欲しいし、わかった。今日から18時で上がっていいよ」
「無理言ってすみません。店長ありがとうございます」
お昼過ぎ、シュンが店に来た。
「シュンさん」
「いつものお願いします」
「はいっ」
「昨日は大丈夫でしたか?」
「はい。大丈夫でしたよ」
「よかった」
「あ、それと今日から私18時で上がります」
「そうなんですね」
「主人が19時には帰って来るので」
「あ…そうですか」
「私、もう一度主人と頑張ってみようと思います。これから早く帰るってことは秘書とも会わないんだろうし。思い出したら本当嫌になるけど、忘れることにします」
「…スミさんがそう決めたならそれでいいと思います。とりあえず良かったですね」
「シュンさんには色々話聞いてもらったし、色んなことしてもらったし…本当に感謝してます」
「僕は何も…じゃ行きますね」
「はい。ありがとうございました」
スミは笑顔で出て行ったシュンを見て安心してくれたと感じた。
でもシュン自身は内心複雑な気持ちだった。
シュンさんは私の心の支えだった…
今までありがとう…
お義母さんを安心させないと…
スミは裕二の母親のことを思うと、裕二とやり直すしかないと考えていた。
18時になり、スミは急いでタクシーを拾い帰って夕食の準備をした。
19時過ぎ、裕二が帰って来た。
「おーっ、肉のいい匂い」
「おかえり。いいお肉だから今夜はステーキにしたよ」
「じゃ先に食事にしよう。今日は赤ワインだな」
2人は食事を終え、リビングでテレビを観ていた。
「スミ、もうちょっと飲もうか」
「うん」
裕二は白ワインを持って来た。
「乾杯」
「何か久しぶりだな。こうやってスミと2人で飲むの」
「そうだね」
本当に久しぶりだった。
一緒に食事して一緒にテレビ観ながら2人で飲んでる…
これが本来の形だ…
「さっき赤ワイン2本空けたせいか酔ってきたな」
「そろそろ寝たら?」
「そうだな…今日から一緒の寝室に戻っていい?」
「あっ…うん」
裕二はスミの手を引き寝室に行った。
裕二がスミの服を脱がせようとした瞬間、スミは裕二の手を振り解いた。
「え…」
「ごめんっ、今日アレだから」
「アレって…あーっ、そっか。じゃ仕方ないな」
裕二は腕枕をしてすぐに寝てしまった。
いざ裕二とするとなると秘書のことが頭に浮かび無理だったスミは、アレの日だと嘘をついてしまった。
普通にしてればいいけど、いざするとなると…
最近まで秘書と不倫していたと思うとまだ時間がかかりそう…
裕二…ごめん…
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