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第1章
22話 義母の頼み
しおりを挟むバイトが終わったスミがバス停でバスを待っていると携帯が鳴った。
裕二の母親からだった。
「もしもしお義母さん」
「スミちゃん久しぶり」
「お久しぶりです」
「裕二に電話しても出ないから。今何してるの?」
「あっ、ちょっと今出先で。もう帰りますけど」
「じゃあ、家に寄ってくれない?渡したい物があるから」
「わかりました」
スミはタクシーを拾い裕二の実家に行った。
裕二の実家は自宅から車で20分のとこだ。
父親は他界し、母親1人で住んでいる。
「スミちゃん急にごめんね。どうぞ上がって」
「はい」
「座ってて。今お茶いれるから」
「あ…はい。ありがとうございます」
お茶を飲んでいると、裕二の母に裕二から電話が入った。
「もしもし裕二?仕事だったの?」
「いや、お風呂入ってた」
「そう。今スミちゃん来てるから」
「え?どうして⁈」
「渡したい物があったから来てもらったの。あんたは電話に出なかったでしょ」
「ちょっとスミに代わって」
「ええ、ちょっと待って」
裕二の母がスミに携帯を渡した。
「裕二が代わってって」
「あ…はい」
「もしもし」
「もしもし、バイト辞めたんだろ?何してたの?」
「あ…友達と会ってた」
「友達って?」
「ミリ…」
「あ…ミリさんとね」
「うん」
「迎えに行きたいけど風呂上がってビール飲んでしまったからな~」
「大丈夫。タクシーで帰るから。じゃあね」
電話を切った。
「スミちゃん、裕二とは上手くいってる?」
「えっ…どうしてですか?」
「あの子ちょっと短気なとこあるから。それに子供だってまだ…」
「あっ…すみません」
「気を悪くさせてしまったならごめんなさいね。子供のことはもう言わないわ。ただ、裕二はスミちゃんを悲しませてない?」
「…はい」
「あの子、根は優しい子なのよ。ただそれを上手く出せないからね」
「そうですね」
「スミちゃん。私はスミちゃんみたいな子が裕二と一緒になってくれて本当に嬉しいし感謝してる。私はもう年だし長くはないけど、スミちゃんが裕二の傍に居てくれるから安心なのよ」
「お義母さん…」
「あっ、そうそう…渡したい物があるんだったわ」
裕二の母は冷蔵庫から箱を出してきた。
「これは?」
「頂き物だけどお肉よ。いい肉みたい。私1人じゃこんなに食べられないから、持って帰って裕二と食べて」
「こんなに…いいんですか?」
「いいのよ」
「ありがとうございます」
「たまには裕二と一緒に遊びに来てね」
「はい。わかりました」
「スミちゃん、裕二のことよろしくね。私はスミちゃんだけが頼りだから」
「お義母さん…」
裕二のお母さんは心配症で優しい人だ…
とても裕二が不倫してるなんて言えない…
スミは複雑な気持ちのまま家に帰った。
「スミ、おかえり」
「…ただいま」
「何?その箱」
「お義母さんからお肉頂いた」
「肉⁈じゃ明日の夕食は肉だなっ」
「…うん」
「それと…スミ」
「何?」
「昨日、突き飛ばしたりしてごめん。ついカッとなってしまって」
「…うん」
「今日コーヒーショップ行ったんだけど、スミが辞めたって聞いて安心したし嬉しかったよ」
「あっ、うん」
「地曽田のことも、スミは本当は嫌だったんだろ?スミは優しいから仕方なく付き合ったんだろ?これからは会うことないし、安心しろ」
スミは何も言えなかった。
「明日から俺、早く帰るから一緒に夕食とろうな」
「早くって何時くらい?」
「19時くらいかな」
19時⁈うわぁ…バイト、早く上がらないと…
「そう…わかった」
スミは裕二の母親から言われた事が頭から離れなかった。
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