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第1章
18話 アキの戦略
しおりを挟む会社に戻った裕二は怒りが収まらず、書類などを投げ散らかした。
アキが社長室に入って来た。
「どっ、どうしたの⁈」
アキは散らかった書類を片付ける。
「何があったのよ⁈」
「UCグループは地曽田グループに取られたんだよ!」
「え?取られたって?」
「うちと取引き辞めて、地曽田と取引きしやがった」
「本当⁈UCグループと取引きなくなったら大ダメージだよ‼︎」
「絶対許さない‼︎地曽田‼︎」
「私…いい考えがある!」
「え?いい考えって?」
「聞きたい?」
「何だよ」
「じゃあ、今日終わったらホテルに来て」
「だから忙しいって言ってるだろ」
「そう、じゃいいよ。いいこと思いついたんだけどな~。地曽田社長の弱み握る方法」
「え…本当かよ」
「でも忙しいからダメなんでしょ?」
「…わかった。行くよ」
仕事が終わり、裕二はアキが待つホテルに行った。
「アキ、いい考えって何だよ」
「まずは飲みましょ」
アキはワインを注いだ。
2人はしばらくワインを飲む。
「そろそろ教えてくれよ。どうやって地曽田の弱み握るんだ?」
「私、地曽田社長に近づく」
「近づくって」
「地曽田社長は私が裕二さんの秘書だってこと知らないから、何とかして近づいて誘惑する」
「え…」
「証拠として写真撮るから。浮気したってなれば奥さんや会長も黙ってないでしょ。会社のイメージも下がるはず。そうなればUCグループも地曽田との取引きを考え直すかも知れない」
「アキ!流石だよ‼︎」
「惚れ直した?」
「うん!」
「まずは地曽田のこと調べてから実行する」
「わかった。じゃそろそろ…」
「え?」
「ベッド行こうっ」
2人はベッドに行った。
スミにバレてアキとは距離を置くつもりだった裕二は、結局意志が弱いクズ男だった。
3日後、アキが社長室に入って来た。
「アキッ」
「地曽田社長のこと調べたわ」
「本当か?どうだった?」
「残念ながら社長のこと悪く言う人はいないみたい。真面目で思いやりのある人みたいだから信頼されてるわね」
「チェッ」
「ただ…地曽田一家は複雑よ」
「複雑って?」
「会長は今の奥さんとは再婚で前の奥さんは亡くなったみたい。だから社長は亡くなった奥さんの息子よ。だから今の奥さんは本当の母親じゃないし、社長と会長の奥さんは仲良くはないみたい」
「そうか。社長は一人息子か?」
「うん。それと社長の奥さんはあのFグループの娘で社長にゾッコンだったみたいで…会社の為に社長は結婚させられたみたい」
「えっ、あのFグループの娘だったのか⁈」
「そうよ。今は地曽田家と同居してるみたい」
「政略結婚って事か」
「うん。奥さんの方がかなり地曽田社長にのめり込んでるっぽいね」
「あんなきれいな人が地曽田に…?クソッ」
「あ、そっか。裕二はパーティーの時に会ったことあるのよね」
「うん。でもよくそれだけ調べたな」
「まぁね。社長とは飲み屋で近づく予定だったけど行きつけの飲み屋がなかったから作戦変更する」
「どうするんだ?」
「私が土地を勧めに別会社を装って地曽田グループに出向いて社長に会って来る」
「え?」
「接待まで持って行くから、散々飲ませてホテルに行く」
「は?ホテルに行って何するんだよ!アキも酔って2人共いい感じになったらどうするんだよ」
「私がお酒強いの知ってるでしょ。大丈夫。社長をベッドに寝かせたとこに私が横たわって写真撮るから」
「そんな上手くいくか?それに土地を勧めるって?」
「表参道の土地があるでしょ」
「え?うちの会社の土地じゃないか‼︎」
「本当に売る訳じゃないから!」
「当たり前だろ‼︎」
「だからその土地の資料貸して。コピーするから。あっ、適当に社名考えて名刺も作らなきゃ」
「…わかったよ」
「今日中に準備して明日行って来るね。あっちは決算も終わって落ち着いてるはずだから」
「俺の為にそこまで…」
「その代わり、全て終わったら私のとこに来てくれる?」
「どういう事?」
「離婚して私と一緒になって」
「何言ってんだよ」
「前も言ってたじゃない。何、覚えてないの?」
「そ、それは…」
「私、犯罪じみた事するんだよ。裕二の為に!」
「…そうだな…」
翌日、アキは地曽田社長にアポを取り地曽田グループに行った。
「初めまして。私LC社の田中アキと言います」
「初めまして。どうぞ座って下さい」
「はい」
「朝の電話では、売りたい土地があるとか?」
「そうです。この土地なんですが」
アキは土地の資料を渡す。
「表参道ですか。場所的にいいですね」
「はい。セレブが多いのでブティックやレストランでも良いと思います」
「ですね。でも何でうちの会社に?」
「それは地曽田グループさんだからです。大手だし信頼性もありますし」
「それはありがとうございます。金額ですが…」
「あの…社長」
「どうしました?」
「今日の夜、時間ありますか?」
「え…どうしてですか?」
「うちの社長に接待して来いって言われてて。お金も渡されました。なので…」
「え…」
「金額の事などはその時にお話ししたいんですが…」
「少しの時間なら。どこへ行けばいいですか?」
「タクシーでお迎えに参ります。何時頃がよろしいですか?」
「19時半なら大丈夫ですが」
「それでは19時半に会社の入り口に居ます」
「わかりました」
「では後ほど」
19時過ぎ、アキは迎えに行ったタクシーに乗り、地曽田グループの入り口付近でシュンを待っていた。
すると、近くにあるコーヒーショップのシャッターを閉めてる人に目がいった。
え…あの人、裕二の奥さん?
間違いない‼︎どうしてシャッター閉めてるの?
アキが疑問に思っているとシュンが来た。
「お待たせしました」
「あっ、はい。行きましょうか」
料亭の個室に入った。
「お酒は飲まれますよね?何がいいですか?」
「少しなら。ビールで」
「わかりました」
少しと言うことは、あまり強くないのね。楽勝に酔わせられそう。
「あの、土地の件ですが」
「まずは食事しましょう」
「は…はい」
「あ、そう言えば名刺渡すの忘れてましたね」
2人は名刺交換をした。
「会社も表参道にあるんですねー」
「はい」
「会社は創業してどの位経つんですか?」
「えっと、5年です」
「5年…?LC社…初めて聞くなぁ…」
「社長っ、日本酒飲みましょうっ」
アキは日本酒を4合頼んだ。
「そんなに⁈田中さんお酒好きなんですね」
「はい。社長も飲んで下さいね」
「あの…そろそろ仕事の話をしたいんですが」
「あっ、そうですね」
「土地の件、前向きに検討したいんですけど」
「ありがとうございます。金額なんですが」
「15億はどうですか?」
え⁈15億⁈
流石、地曽田グループだわ…
うちの会社は5億で買った土地なのに…
「少ないですか?」
「いえ、社長も納得すると思います」
「では早速、契約したいんですけど」
「あ、あのっ、すみません。それが契約書を持って来てないので、また改めてお持ちします」
「…そうですか」
こんなにスムーズに契約まで行くとは…
厄介な事になる前に早く弱み作らなきゃ…
「そろそろ出ましょうか」
「は、はい」
「僕はこのままタクシーで帰りますね」
「ちょっと待って下さいっ‼︎」
「え?」
「もう1軒行きません?全然飲み足りなくて」
シュンが全然酔ってないので、まだ飲ませるしかなかった。
「でも、それはちょっと…」
「仕事の相談もあるし、少しだけお願いします」
「…わかりました。本当少しだけですよ」
2人はタクシーに乗った。
「どちらまで?」
「SPホテルまでお願いします」
「かしこまりました」
「SPホテル?えっ、何でホテルなんですか⁈」
「勘違いしないで下さいねっ。SPホテルの1階のバーに行くんですよっ」
「あ…ああ、そうですか」
バーに着くと2人はカウンターに座り、ウイスキーを頼んだ。
「本当、よく飲まれますね」
「それは…地曽田社長との取引きがスムーズにいって嬉しいからですよ~」
アキはシュンにお酒を飲むペースを上げさせようと、自分から勢いよく次々に飲んだ。
「あの、ちょっとお手洗いに行って来ます」
そう言うとアキはお手洗いに行くフリをしてホテルのフロントに行った。
酔ったシュンを部屋に連れ込む為に、先にチェックインをしに行ったのだ。
シュンがふと下を見ると名刺が落ちていた。
田中さんが落として行ったのかな…
シュンが名刺を拾い見てみると、アキの本当の名刺だった。
田中さんの名刺か。
でももらった名刺と違う…
会社名も…え?柳本グループ…秘書⁈
シュンはスミが言っていた事を思い出した。
スミの夫が秘書と不倫してるって事を…
柳本社長の秘書…え⁈
でも何で、偽の会社の名刺まで作って俺のとこに来たんだ⁈
するとアキが戻って来たのでシュンはその名刺をさっとポケットに入れた。
「あ~まだ飲んでませんねぇ~」
もしかして酔わせるつもりか…
「早く飲んで下さいよ~」
「飲みますから田中さんも飲んで下さい」
「わかりました~」
シュンはウイスキーを次々に飲み干した。
お酒が強いシュンは全然平気だった。
シュンは偽のアキの名刺を見ていた。
「田中さんの会社、明日にでも伺っていいですか?表参道ならついでに土地も見れるし」
「えっっ」
「LC社か…ビルですか?」
「は、はい」
「社長にも会いたいし、明日伺いますね」
「えっと、明日は事務所に誰も居ませんし…また今度」
「誰も居ない?忙しいんですね。では会社の場所だけでも調べておきますね」
シュンは偽の名刺に載っている住所を携帯で検索しようとした。
「あっ、地曽田社長っ」
「はい?」
早く酔わせなきゃ…
も~何で酔わないのよぅ…
「私これ一気に飲みまーす!社長も早く飲んで下さいっ」
うわっ、これじゃ私が…
酔っちゃう…っていうか…
クラクラしてきたぁ~
「あの…急用を思い出したのでお先に失礼します」
「えっ⁈そ、そんな…」
シュンはお金だけ払って行ってしまった。
嘘でしょ~
最悪っ、これじゃあ
作戦失敗じゃないのぉ~
アキは酔っ払ってしまい、そのまま寝てしまった。
「お客さん‼︎」
え…
「ここで寝られたら困ります」
「…は…はい」
アキはフラつきながら自分でチェックインした部屋に行き、寝てしまった。
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