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第1章
7話 女の影
しおりを挟むお昼過ぎ、スミは裕二の脱ぎっぱなしの上着をハンガーに掛けようとした。
すると上着から香水の匂いがしてきた。
え…この匂い、裕二の香水じゃない…
それに私の香水でもない…
パーティーの時、誰かの匂いが付いたのかな…
よく見ると上着に1本、長い茶色の髪の毛が付いていた。
何この髪の毛…
私のじゃない…誰の⁈
え…?
香水に長い髪の毛…朝帰り…
歓迎会の日だって会社に居なかったし…
帰りも遅かった…
裕二の言ってた事も今思うと嘘っぽかったような…
スミは一気に裕二を怪しんだ。
スミは、今日も帰りが遅くなるのか確認するため裕二にラインした。
しばらくして、今日は早く帰ると返事がきたので、買い物に行って夕食の準備を始めた。
19時。裕二が帰宅し、食事をする。
「ねぇ裕二。昨日、会社で飲んだって言ってだけど部下の人たちと?」
「え…そ、そうだけど」
「女性は居たの?」
「女は…居なかったけど?男だけで飲んだよ」
じ、じゃあ…あの髪の毛は…?
「女性は1人も居なかったの?」
「だから居なかったって‼︎何だよ、しつこいな‼︎」
「あ…ごめん」
「スミはパーティーには最後まで居たの?」
「…うん」
「ちゃんと食べたか?」
「足が痛くてそれどころじゃなかった」
「足?あ、そう言えば何か痛いとか言ってたな。その足でよく帰れたな。考えたらあそこタクシー捕まらなかったからな。俺は呼んで行ったけど…」
「…うん」
「ご飯、おかわり」
「…はい」
「地曽田の社長も何かイラつくんだよな~余裕ぶっこいてるって感じで…ちょっとイケメンだからって…あー、思い出しただけで腹立ってきた」
「そんな人には見えなかったけど…」
「何だよ。あいつの肩持つのかよ」
「…何も…肩持つなんて…」
「お前も地曽田の奥さん見習えよ。エステでも行って来たら?」
「…ゆ、裕二…」
「もっと自分磨きしたら?」
「私ちょっとコンビニ行って来る…」
スミはこれ以上裕二と話したくなかった。
外に出たスミは悔し涙を流しながら歩いていた。
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