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19 陸の告白
しおりを挟む翌日、陸が会社に着くと和の姿はなかった。
行動予定を確認しに行くと、和は午前中取引先に直行し午後から内勤とのことだった。
午後…顔合わせるのか…
その時、陸は部長に呼び出された。
「佐田には先に伝えておこうと思ってな」
「何でしょうか」
「大村のことなんだが」
「えっ?」
「引き抜きの話が出てるんだ」
「引き抜き…ですか?」
「ああ。A社の社長が大村のこと気に入ったみたいで」
A社の社長が…⁈
オレのミスで大村が徹夜した会社だ…
「で、大村はそのこと…」
「今朝、電話で伝えた」
「…大村は何て」
「考えさせて下さい。だとさ」
「そう…ですか」
確かに…
A社の社長は大村のこと気に入っていた…
まさか…引き抜きだなんて…
「まだはっきり決まってないから誰にも言うなよ」
「わかりました」
昼休みが終わる頃、和が会社に戻って来た。
和は陸と目を合わさずに頭を下げて席に着いた。
陸は一昨日のことを思い出すと気まずかったが、引き抜きの件もあるし思い切って和に話しかけた。
「あのっ…大村っ?」
「はい…」
「今日…仕事終わったら飯でも行かない?」
「え…」
「聞きたいこともあるし」
「一昨日のことなら…」
「いや…別のことで」
「、、、、」
「嫌なら飯じゃなくてもいいから…とりあえず時間作って」
「…わかりました」
そして2人は仕事が終わると陸の車で一旦マンションに帰り、近くの公園に行った。
「聞きたいことって何ですか?」
「うん…今日、部長から聞いたんだけど」
「引き抜きの件ですか?」
「あっ…うん。行かないよな?」
「…正直…迷ってます」
「えっ…どうして?」
「それは…」
「今の会社は不満か?」
「不満だなんて。本当は今の会社でずっと働きたいです」
「じゃあ…どうして迷うんだ?」
「僕…先輩に告白してしまったんですよ」
「え」
「今日だって先輩と会うの気まずくて会社に戻りたくなかったです…」
「だから…オレと同じ会社は嫌だから迷ってるのか?」
「…はい。先輩は僕に引いたと思うし…先輩に嫌われたくない…」
「、、、、」
「だから…もう遅いけど一昨日僕が言ったこと忘れて下さい」
「…何勝手なこと言ってるんだよ」
「…え」
「オレがお前に引いたと思うか?何でお前が言ったこと忘れないといけないんだ」
「え…だって僕…男ですよ」
「だから?」
「先輩?」
「嬉しかったよ。お前の気持ちがわかって」
「え」
「だってオレも…お前のこと…好きだから」
「そっ…それって…」
「恋だよ」
「う…嘘でしょ?僕に合わせて言ってるだけじゃ?」
「嘘じゃない。オレだってまさか男を好きになるなんて思ってもみなかった。ただ言えるのは男が好きなんじゃなくて大村…お前のことが好きなんだ」
「せっ…先輩っ…」
「おっ…おい、泣くなよ?」
「わっ…わかってます…でも嬉しくて」
「あー、でも伝えられてスッキリした」
「いつから僕のこと…?」
「わからない…いつの間にか気になってた…お前は?」
「僕は…初めて先輩と会った時からです」
「マジかよ」
「マジですっ」
「そっ…そうか」
「先輩、もう1度…僕のこと好きって言って下さいっ」
「えっ…」
「お願いしますっ」
「…大村、オレはお前のことが好きだ。だからずっとオレと同じ会社にいろ」
「…わかりました‼︎」
「よーし、いい子だ」
「先輩っ、お腹空きましたっ」
「そうだね。じゃ何かテイクアウトでもして家で食うか」
「はいっ」
お互いの気持ちがわかりスッキリした2人は、テイクアウトをして陸の家に帰った。
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