Pure love 〜純粋な恋愛〜【完結】

真凛 桃

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14 久しぶりの楽しい時間

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和は立ち止まったままエレベーターに乗ろうとしなかった。


「大村っ…乗らないのか?」

「知り合い?」

「あっ…うん。同じ会社の部下」

「そうなんだっ」


すると和はエレベーターに乗った。


「おはようございます」

「おはよ」

「初めまして。私、陸の彼女のミクと言います」

「あっ…どうも」

「今日は早出か?」

「はい。直接T社まで行きますので」

「そっか」


1階に着きドアが開いた。


「それでは」


そう言うと和は行ってしまった。


「何か冷たそうな人だね」

「そんなことないよ」


大村…どうしちゃったんだ…?
オレを避けてるのか…?


陸はミクを送り、会社に向かった。
今日は内勤だった陸は何故かモヤモヤして仕事に集中出来なかった。


アイツ…次はいつが内勤なんだ…?


陸は行動予定を確認しに行った。

2人の内勤が重なる日は明後日だった。


明後日は2人とも内勤か…
その日は久しぶりに大村と家で飲むか…


そう決めた陸は次の日の仕事帰りに買い物を済ませ、翌日隣の席にいる和に話しかけた。


「大村っ」

「はい?」

「今日家で焼き肉しない?買い物も済ませてるからさ」

「えっ…」

「久しぶりに焼き肉食べたくてさ。大村ともかなり飲んでないし」

「彼女さんと会わないんですか?」

「会わないけど?」


大村…オレに彼女出来て気を使ってたのか…


「彼女とはそんな頻繁に会わないよ。日曜日くらいしか」

「、、、、」

「嫌か?」

「いえ…行きます」

「じゃ…仕事終わったらオレの車で一緒に帰るか」

「はい…」


そして2人は陸の家で飲みながら焼き肉を始めた。


「たくさん食べろよ」

「はい…」

「大村の好きな赤ワインもあるからな」

「ありがとうございます」


陸は久々にテンションが高かった。


「焼き肉食べたかったなら彼女さんと食べればよかったじゃないですか」

「あ…それはちょっと」

「どうしてですか?」

「何かね…」

「可愛い彼女さんでしたね」

「まぁ…ね」

「この前…彼女さん泊まられたんですね」

「あ…うん」
 
「上手くいってるみたいで…よかったです」

「もう彼女の話はやめよう。肉が焼けてるから食べよ」

「先輩、ワインもらっていいですか?」

「どうぞ。勝手に飲んでっ」


和は珍しくグイグイ飲んだ。


「何か久しぶりだな…大村とこうして飲みながら話すの」

「そうですね」

「もしかして大村さぁ…オレに彼女出来だからって気ぃ使ってる?」

「それは…」

「そうだろ?だから一緒に食事もしなくなったし、オレを避けてたし。いや待てよ…オレを避ける必要ないと言うけど?」

「…先輩っ、グラス空いてますよ」

「あっ…ああ」

「ソファーに座って飲んでいいですか?」

「うん。じゃオレ先にここ片付けるから」

「あっ、僕も手伝います」

「いいよ。ソファーで飲んでて」

「…は…い」


和は洗い物をしている陸の後ろ姿をずっと見ていた。


「ワインまだあるか?」

「ありますっ」

「白ワインもあるからな」

「先輩…」

「え?」

「楽しいですか?」

「え?何て?」

「彼女さんといる時…楽しいですか?」

「…楽しくは…ないかな」

「…そうですか」


洗い物が終わった陸はワインを持って和の横に座った。


「何で…ですか?」

「何が?」

「彼女といても楽しくないんですよね?」

「あー…うーん。何というか…この前初めてデートして丸1日一緒にいたんだけど疲れちゃって。酒も進まなかったし」

「付き合ったばかりなのに。大丈夫ですか?」

「どうだろうね」

「僕と飲んでる方が楽しかったりして」

「楽しいよ。大村と飲んでる方が」

「本当ですかっ⁈」

「お前と飲んでると時間経つの早いし、気ぃ使わなくていいから楽なんだよな」

「嬉しいですっ」

「でも、彼女といても楽しくないとか言っちゃダメだね」

「…そうですね。僕が聞いたから…すみません」

「大村…オレに彼女出来て気ぃ使ってただろ?」

「え…べっ…別に」

「だって一緒にこうやって飲まなくなったし、仕事だってオレから離れたし」

「それは…」

「オレに彼女が出来てからお前の態度が急に変わったもんな。別に彼女と一緒に住んでるわけでもないし結婚してるわけでもないから気ぃ使うなよ」

「…はい」

「よーし!じゃ、たまにはこうして飲もうな」


陸が和の頭を撫でると和は顔が真っ赤になった。


「大村…顔赤いぞ。酔ったのか?」

「はっ…はい…酔ったみたいです」

「もう0時か、早いな」

「あっ…明日も仕事だし、そろそろ帰りますねっ」


和が立ち上がろうとした瞬間、テーブルに足が引っかかり転びそうになった。
とっさに陸が立ち上がって和を支えると、思いっきり顔が近づいた。


えっ…


2人の心臓の音が鳴り響いた。


和は慌てて陸から離れた。


「すっ…すみませんっ」

「うっ…うん」
  
「じゃ…僕帰りますっ。ご馳走さまでしたっ」


和は急いで陸の家を出て行った。


陸はその場に呆然と立っていた。






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