Pure love 〜純粋な恋愛〜【完結】

真凛 桃

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13 すれ違っていく2人

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陸とミクはそのままホテルに泊まり、翌朝タクシーでそれぞれ帰った。


この日は和から何の音沙汰もないまま、1日が終わった。


翌朝、いつも通りに陸は車に乗ってマンションの駐車場で和が来るのを待っていた。
すると和が来て助手席に座った。


「…おはよ」

「おはようございます」


車を走らせ、しばらく沈黙が続いた。


「一昨日は飲み過ぎていつの間にか寝てたなっ。片付けせずに帰ってごめんな」

「いいえ。次の日は大丈夫でした?」

「う…うん」

「どうでした?紹介…」

「ああ…付き合うことにしたよ…」

「…そっ…そう…ですか…」

「今度会わせるよ」

「、、、、」

「大村っ?」

「え?」

「聞いてる?」

「あ…はっ…はい。よかったですね…」

「今夜は仕事帰りに定食屋でも行くか?」

「…いえ、やめときます」

「どうして」

「これからは1人で晩ごはん食べます。先輩は彼女できたんだし彼女と会うでしょ?」

「でも毎日は会わないし…」

「それでも今後は1人で食事しますので」

「あ…そう…わかったよ」


そして重い空気のまま会社に着いた。
会社に着くと和は部長のとこへ行った。


「部長、お話があるのですが」

「どうした?」

「僕、もうそろそろ独り立ちしたいんですが…」

「独り立ちって…1人で営業に行くってことか?」

「はい…」

「どうした急に…佐田と一緒なのが嫌なのか?」

「そうじゃありません。佐田先輩のおかげで仕事も覚えたし…一人前になりたいんです」

「大村…お前って奴は…今までそんなこと頼んで来る社員はいなかったぞ。よし!わかった。今日から1人で回って来い」

「ありがとうございます」

「佐田っ‼︎」

「はいっ」

「今日から大村と回らなくていいから」

「えっ、どうしてですか?」

「独り立ちしたいそうだ。いやー若いのに感心だ」

「独り立ちって…」

「佐田のおかげでもあるし、ありがとな」

「自分はそんな…」

「まっ、そういうことだからお前は思う存分仕事をしてくれ」

「…わかりました」


陸がデスクに戻ると、隣で和が営業に行く準備をしていた。


「大村っ…」

「部長から聞かれました?」

「うん」

「そういうことですから。色々教えて下さり先輩には感謝しています」

「それはいいけど…どうして急に…」

「急じゃありません。ここ最近思ってたんです。あ、それと朝も1人で出勤します。いつまでも先輩に甘えたくありませんので」

「それはいいだろ。甘えるも何も同じマンションなんだし」

「いいえ。それにこれからは営業先に直行したりもしたいので」

「…そっか」

「じゃ僕、営業に行って来ます」


そう言うと和はさっさと会社を出て行った。


その時、陸は和が遠くに見えて何とも言えない気持ちになっていた。


それから陸と和は、会社で顔を合わすだけで会話も減っていき1週間が過ぎた。


日曜日、陸は彼女のミクと昼からデートして夜は居酒屋に行っていた。


「ご馳走さまでしたっ」

「うん。じゃタクシーで帰ろうか。オレが先に降りるから」

「…うん」


2人はタクシーに乗り込んだ。


「初デート楽しかったなぁ。次に会えるのは日曜日?」

「そうだね」

「平日は会わないの?もっと会いたい」

「…考えとくよ」


陸のマンションに到着した。


「運転手さん、ここで1人降ります」

「はい」


陸がお金を渡して降りるとミクも一緒に降りて来た。


「えっ」

「運転手さん。2人とも降ります」

「ミク?」


タクシーの運転手は発車して行った。


「陸の家に行ってみたい」

「今から?」

「ダメ?」


陸は悩んだ。
気を使って疲れていたからだ。


「すぐ帰るから」

「うん」


陸は渋々、ミクを家に上げた。


「キレイにしてるねー」

「何か飲む?お茶かコーヒーか…」

「お酒はあるの?」

「え…ビールならあるけど」

「じゃあ、ビールで」


まだ飲むのかよ…


「はい」

「ありがとう。陸は飲まないの?」

「うん」


ミクはビールを片手に持って部屋の中を探索し始めた。


「キッチン広いね。料理はするの?」

「まぁ…」

「へぇー、いつか陸の手料理食べてみたいなー」


陸が時計を見ると23時になっていた。


「そろそろタクシー呼ぼうか?」

「もうちょっとしたらね。あっ…明日仕事だもんね。シャワー浴びてきていいよ」

「…じ…じゃ、そうする。その後タクシー呼ぶね」


陸はシャワーを浴びに行った。


何だ…この疲れ方は…
早く1人で飲み直しながらゆっくりしたい…


20分後、シャワーを浴び終えた陸がリビングに行くとミクの姿はなかった。
テーブルの上にはミクが飲み干したビールの缶だけが置いてあった。


陸はミクが帰ったと思い玄関に靴を確認しに行ったがミクの靴はそのまま揃えてあった。


えっ?どこにいる?


陸は部屋の中を探し回り寝室のドアを開けるとミクがベッドで寝ていた。


マジかよ…


陸は掛けてある布団をめくり、ミクの肩を揺さぶって起こした。


「ミク、起きて!タクシー呼ぶからっ」

「んー…」

「起きてったら」

「ム…ムリ…明日の朝帰るから寝させてぇ」

「そんな…」


ミクは布団を被ると再び眠るフリをした。


陸は内心イライラしながら寝室を出ようとした。


「一緒に寝ようよ…」

「ソファーで寝る…」


陸はソファーに横になるが、なかなか寝付けなかった。


あー、疲れた…
大村…寝たかな…
久しぶりにアイツと飲みたい…


朝になり、陸はスーツに着替えミクと一緒に玄関を出た。


「送るから」

「本当?ありがとう」


2人はエレベーターに乗り降りていくと6階で止まりドアが開いた。


ドアの向こうには和が立っていた。








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