Pure love 〜純粋な恋愛〜

真凛 桃

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10 間違っていた

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翌朝、陸は一睡も出来ないまま駐車場の車の中で和が来るのを待っていた。


ダメだ…意識してしまう…
ったく…オレはどうしてしまったんだ…


陸が自分の気持ちを落ち着かせようとしていたら和がやって来た。


「おはようございます」

「おっ…おはよう」


和が助手席に座ろうとした。


「あっ…ゴメン。後ろに座ってくれる?」

「えっ…はっ…はい」


和は言われた通り後部座席に座った。


陸は深呼吸して気持ちを落ち着かせた。


「あの…行かないんですか?」

「あっ…行くよ」


車を走らせた陸はルームミラーで和をチラチラ見ていた。
その時、和と目が合いニッコリと和は微笑んた。

陸はその笑顔を見てキュンとしてしまった。


おい…嘘だろ…何だこのドキドキは…


「先輩?」

「えっ?」

「どうしたんですか?何か変ですよ」

「そっ…そうか?普通だけどっ…」

「そうですかぁ?」


ヤバい…普段通りにしておかないと…


「先輩っ、今日の夕食は何にします?」

「あ…」

「また鍋しません?」

「そ…そう…だな…」

「僕の家で」

「あっ…きょ…今日は予定があったんだった。ゴメン…今日はムリだっ」

「そっ…そうですか…わかりました」


会社に着くと陸は大学時代の友人である木村に連絡し、仕事帰りに飲みに行く約束をした。


そしてこの日の夜、陸は木村と居酒屋に行った。


「久しぶりだな。お前から誘って来るなんて珍しい」

「ごめんな急に。木村と久しぶりに飲みたくなって」

「そっか。じゃ乾杯しよう」

「うん」

「仕事は上手くいってるの?」

「まぁね。木村は?」

「ぼちぼちね。最近、離婚の依頼が多くてさ」

「そっか。弁護士も大変だね」

「お前、今彼女はいるの?」

「いや…いない」

「そうなんだ?紹介しようか?」

「え?」

「いや…オレの彼女の友達で可愛い子がいるんだけど今フリーみたいでさ。佐田ならその子から気に入られると思うし」

「、、、、」

「どう?」

「うーん。いいかな。遠慮しとく」

「彼女欲しくないの?」

「…うん」

「えー!もったいない」

「何か女と男の考え方って違うし、いちいち気を使うのも面倒でさ。1人が楽なんだ」

「そっ…そっか。まぁ佐田がそう言うなら仕方ないけど」

「まっ、今夜は飲もう」

「そうだな」


2時間後、2人は2本目の焼酎を飲んでいた。


「相変わらずお前、酒強いな」

「お前もな」

「あのさ…」

「何?」

「オレの会社の奴に相談されたんだけど」

「うん」

「同じ会社に気になる人がいるみたいで。初めは何も思わなかったけど気付いたらその人のことばかり考えてしまうし会うとドキドキするって」

「それで?」

「それって好きなのかなーって」

「そりゃ好きだろ。ドキドキするんだろ?」

「うん。あっ…そうらしい」

「で…好きなのかなぁって相談されたの?」

「…うん」

「社内恋愛かぁ。相手の子は恋人いないのかな?」

「…いない…みたい」

「そっか。上手くいくといいね」

「それが…」

「ん?」

「相談してされたのは男なんだけど、その相手も…男なんだ」

「え?どういうこと?」

「だから…男が男を好きになった…みたいなんだ」

「え⁈そっ…そっち系⁈」


やっぱり…驚くよな…


「マジかよっ‼︎」

「マジ…」

「でも…よくお前に相談してきたなぁ。よっぽど信頼されてるんだな」


オレのことだって死んでも言えない…


「その会社の人は…若いの?相手は?」

「ん…相談してきた人は30代で相手は20代」

「そっ…そっか…オレの周りにはいないから驚いたけど、まぁいるよな普通に」

「でも…難しいよね?」

「相手には告白しづらいだろうね。特に同じ会社なら」

「だよね。お前がもし男に告白されたらどうする?」

「えっ…オレは絶対ムリ。同じ会社なら仕事に行きたくなくなるかも」

「…そう…だよな」

「でも、男同士を否定してるわけじゃない。オレは女がいいだけだから。お前だってそうだろ?」

「うっ…うん」

「相手に引かれるリスクは大だから告白するのはやめておいた方がいいと思うけどなぁ。お前はどう思う?」


やっぱりそうだよな…まず引くよな…


「佐田っ?聞いてる?」

「えっ?あっ…うん」

「どう思う?相談されたんだろ?」

「うん…告白もだけど…好きになっちゃダメだよな…」

「それはいいんじゃないか?」

「いや…ダメだ。今の関係を崩さない為にも」


そうだよ…オレがどうかしてた…
大村は男だ…それに…部下…


「木村っ!やっぱり紹介してもらおうかな」

「えっ…オレの彼女の友達のこと?」

「…うん」

「本当かっ?でも1人が楽って言ってなかった?」

「そう思ったけど…気が変わった」

「そっ…そうか。わかった。じゃ近いうちにセッティングするよ」


彼女さえ作れば…大村のことも…
目を覚まさないと…



明日から普段通り、大村に接しよう… 









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