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5 陸の為

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A社着くと社長が入り口に立っていた。


「申し訳ございませんでしたっ」


和は深く頭を下げた。


「明日店に出すんだぞっ‼︎どうするんだっ‼︎佐田くんはどうしたんだっ⁈」

「佐田は体調を悪くして今日は欠勤です。全て僕の責任です。明日まで間に合うように全部タグを付けますっ」

「あんな量をか⁈間に合う訳ないだろっ」

「必ず間に合わせますっ‼︎」

「もし間に合わなかったらわかってるだろうな。佐田に責任とってもらうからな」

「えっ…あっ…はい、わかりましたっ。商品はどこにありますか?」

「そこの倉庫にある。明日の朝8時には店に出すからな」


和は走って倉庫に行った。
そして1枚1枚丁寧にタグを付け始めた。


先輩の為だ…何としてでも間に合わせないと…


和は必死だった。


その頃、病院で点滴を受けて帰宅した陸は
熱も下がり随分よくなっていた。


大村くん1人で大丈夫だったかな…
いや…さすがに誰か手伝ってくれたよな?


気になった陸は和に電話をかけたが繋がらなかった。


20時か…疲れて寝てるかな…
明日昼メシでも奢るか…


時刻は日付が変わり0時を回ったが、タグ付けはまだ半分も終わっていなかった。
残りの量を見るだけでも気が遠くなるくらいだったが和は手を休ませなかった。
だが次第に手首が痛み出し眠気も襲ってきた。


くそーっ…ダメだっ…8時までには間に合わせないとっ…


和は近くのコンビニに栄養ドリンクを買いに行き、再び作業に取り掛かった。


そして7時半、倉庫にA社の社長が入って来た。


「きっ…君っ…今までずっと…⁈」

「あっ…はい。あとこれだけタグ付けたら終わりますっ」


残りは5枚だった。


「あれだけの量を…1人で…」


社長は心を打たれた。


全てのタグを付け終わり急いでダンボールに詰めた。


「終わったーっ」

「君っ…名前は?」

「大村和です」

「大村くん…ありがとう。出来ても半分いくかいかないかと思ってたから最悪出来た分だけ店に出すつもりだったよ。まさか徹夜で今まで作業してくれてたとは…」

「こちらの責任でしたし…でも間に合ってよかったです」

「本当…助かったよ」

「あっ…会社に行かないとっ。社長、今回は本当に申し訳ありませんでした。今後はこのようなことが一切ないように致します。それでは失礼しますっ」


和は急いでその場を去り会社へ向かった。


マズイ…9時に着くかな…


バスでは間に合わないと思った和はタクシーに乗った。
だが途中で渋滞に巻き込まれたので和はタクシーを降りて会社まで走った。


会社では朝礼が始まっていた。


「佐田、体調はもういいのか?」

「はい。昨日はご迷惑をおかけしました」

「そうか。今日の予定は?」

「午前中は営業所を回って午後はC社とD社に行きます」

「D社は遠いから直帰していいぞ。それより大村は?」

「それが…連絡つかなくて…」


その時、和が息を切らしながらやって来た。


「大村くんっ…」

「遅刻してすみませんっ」

「おいっ、連絡もしないで遅刻なんて何やってるんだっ」

「…すっ…すみません」

「そうだぞ。佐田、教育がなってないぞ」

「すみません」

「大村くん、昨日と同じ格好だけどもしかして徹夜で遊んでたんじゃないの~?」

「えっ…」

「そっ…そうなのか?」

「違いますっ」

「さぁ、みんな仕事に取り掛かりなさい」


陸と和は車に乗り、陸は無言で車を走らせた。


「あっ…あの先輩…熱は下がりましたか?」

「、、、、」

「先輩?」

「ああ…」

「怒ってますよね…?遅刻してすみませんでした…」

「何で遅刻した?寝坊か?それとも遊び回ってそのまま出勤したのか?」

「…違います」

「じゃ何だ?」

「それは…」

「オレの教育がなってなかったよ。入社して長くないのに遅刻なんて信用失くすだけだからな」

「…はい。すみません…」

「それに何だ?その髪。髪くらいセットして来いよ」

「、、、、」


しばらく車内は重い空気が流れ沈黙が続いた。


一睡もしてない和は何度も目を擦った。


「眠いのか?しっかりしろ‼︎着いたぞっ!行くぞ」

「はっ…はい」


午前中の営業が終わった頃、陸に上司から電話が入った。


「今からですか?はい…わかりました」


内容はA社の社長から呼び出しがきたということだった。









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