真実【完結】

真凛 桃

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69話 願い

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翌朝、ホンユとジスンはゲームをしていた。


「ジスン、なかなかやるな~」

「お兄ちゃん、弱すぎぃ~」

「ホンユさん、コーヒー飲みますか?」

「あっ、うん!ありがとう」

「ジスンはー?オレンジジュースでいい?」

「うん‼︎」

「はーい!」


    ガシャンッ!!


久美子がジュースを注ごうとしたらグラスを落とし、お腹を押さえてしゃがみ込んだ。


「ママッ‼︎」

「久美さんっ‼︎」


ジスンとホンユは慌てて久美子の元へ行った。


「どうした⁈大丈夫⁈」

「お腹が…お腹が…」

「えっ、お腹が痛いの⁈」

「は、はい…」

「ママー、大丈夫⁈」

「久美さん、まさかっ」


もうすぐ生まれると思ったホンユは久美子を抱えると、ジスンと車に乗り病院へ急いだ。


病院に着くと、久美子は分娩室に運ばれた。


ジスンを分娩室の前にある長椅子に座らせると、ホンユは携帯を取り出した。


「ジスン、ちょっと電話してくるからここで待っててね。すぐ戻るから」

「うん」



しばらくするとジスンの元へ電話を終えたホンユが戻って来た。


「誰と話してたの?」

「ん?ちょっとね」

「ママ、大丈夫かな…」

「大丈夫だよ!」

「どの位したら赤ちゃん生まれるの?」

「そうだね…1時間もかからない人もいれば、何時間もかかる人もいるみたいだからね」

「何時間も?ママ、かわいそう…」

「ママは頑張ってるから、ここで見守っていよう」

「…うん」

「ジスンもいよいよお姉ちゃんになるね」

「うん。弟かな、妹かなぁ…」

「ジスンはどっちがいい?」

「んーと…パパに似た男の子がいいなー」

「そっか…そうだといいね」



2時間が過ぎた。
なかなか生まれて来ないので、久美子は苦しんでいた。


「もう少し力を入れて下さいねーっ」

「痛いっっ」

「大丈夫ですよーっ」


あまりの痛さに涙が出てきた。


「お母さーん、大丈夫ですかー?」


全然大丈夫じゃなかった。


「先生、どうしますか?このままじゃ…帝王切開しか…」

「そうですね…」

「嫌ですっ!」

「頑張れますか?」

「…は…はい」



頑張らなくちゃ…
チスンが見守ってくれてるはず…

チスン…


頑張って力を入れるが、あまりの激痛で涙が止まらない。


「もっと力を入れて下さい」


ゔわ…         無理かも…


久美子は目を閉じると、誰かが手を握ってきた。

懐かしい暖かさの手だった…



目を開けてみると、一瞬…時が止まった。



え…


チスン…?









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