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67話 整理
しおりを挟む翌朝、久美子が目を覚ますと隣にジスンがいなかった。
リビングに行くと、ホンユとジスンが料理をしていた。
「ジスン…」
「ママー、おはよう!ジスンねー、お料理のお手伝いしてるんだよー」
「久美さん、おはよ。ジスン、俺より上手だよ」
初めてジスンが椅子の上に立って料理をしている姿を見て、久美子は心を打たれた。
朝食が出来上がり、3人で食事をする。
「ママの目玉焼きはジスンが作ったんだよ」
「ジスン、ありがとう」
「お兄ちゃん、卵1個床に落としたもんねー」
「シッ!ジスン、それ言うなって」
久しぶりに和やかな雰囲気になり、食べ終わったジスンはテレビを見に行った。
「久美さん、あれからゆっくり寝れた?」
「はい!もうこれからは大丈夫です」
「よかった」
「今日、チスンの部屋を片付けようと思います」
「えっ…」
「この家も落ち着いたら出て、どこか他に住む所を探します」
「そこまでしなくても…」
「実は、チスンが出て行く前に通帳もらったんです。チスンは私に管理して欲しいからって言ってたけど…こういうことだったんだと思うから」
「…そっか。じゃ、使わないとね」
ホンユが帰ってしばらくすると、久美子はチスンの部屋を片付け始めた。
たくさんのスーツやカッターシャツ、ネクタイなどをダンボールに詰めた。
これでいいんだ…
前に進む為に強くならなきゃ…
ジスンとこの子の為…
そしてチスンの為に…
するとお腹の赤ちゃんが動いた。
久美子は嬉しくなり、お腹に手を当てた。
もうちょっと待ってね。
お母さん、頑張るから…
あと少しの辛抱よ…
もっと栄養つけなきゃね!
久美子はお腹の子に優しく話しかけた。
そして、寝室のシーツも替え、なかなか捨てきれなかったチスンの歯ブラシも処分した。
この日、久美子は夕方まで家の中を掃除していた。
3日後。
朝、いつも通りホンユが来て、久美子とお茶を飲んでいた。
「そういえば…この前、落ち着いたらここを出るって久美さん言ってだけど、落ち着いたらっていつ頃?」
「そうですね、この子が生まれてからでも…」
「そんなに早く?もうちょっと後でもいいんじゃない?」
「なぜですか?」
「いや…何となく」
「もう決めたので」
「もしかして次に住む家、もう探してるの?」
「はい。ネットでいくつかいい所は見つけました。」
「マジで⁈俺に任せてよ。ネットじゃ当てにならないから」
「そ、そうなんですか?」
「うん。だから、久美さんは探さなくていいから…ねっ」
「…わかりました」
「チスンの…」
「え…?」
「チスンの部屋は片付けたの?」
「…はい」
「ちょっと見て来ていい?」
「どうぞ」
ホンユはチスンの部屋に入った。
しばらくしてホンユが戻って来た。
「あいつ、いい物ばっかり持ってるな~ダンボールに詰めてるけど、どうするの?捨てるの?」
「はい…ここを出る時に処分しようと思います」
「そうだね。捨てちゃえ捨てちゃえー!こっちの気持ちも分からずに出て行った奴のなんて、全部捨てちゃえ!」
「…ホンユさん?」
「時計はいくつか俺が頂こうかな~」
「ホンユさん、何かいい事でもあったんですか?異様に明るいような…」
「そ、そぉ?いつもと変わらないけど…」
「そうですかぁ?」
「そっ、そういえば…お腹の子は女の子かな、男の子かな?」
「どっちでしょうね」
「もう性別は分かるんでしょ?聞かないの?」
「はい。元気に生まれてきてくれたら、男の子でも女の子でもどちらでもいいので…」
「そっか。チスンと久美さんの子だから、きっと可愛い子が生まれてくるんだろうな~」
「…は、はい」
「ジスンの時、チスンは立ち会いたかっただろうな~俺だったら怖くて立ち会うのは無理だけど…」
「ホンユさん、もうチスンの話は…」
「あっ、ごめんごめん。そういえばジスンはまだ寝てるのかな~ちょっと見てくるね~」
何…?今日のホンユさん…何だか変…
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