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4話 2人の嫉妬
しおりを挟む翌日。仕事が休みの久美子は、昨夜の余韻が残っているせいか、鼻歌を歌いながら部屋の片付けをしていた。
夕方になり買い物に行こうとすると、玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けるとスジンが立っている。
「ス、スジンさん‼︎どうしたんですか⁈」
「いやー急にゴメン。昨夜のこと、謝りたくてさ」
「あ…酔い潰れちゃいましたね」
「本当にゴメン。ちょっとだけ今から時間ある?」
「買い物に行こうと思ってたけど、少しならいいですよ」
近くの公園まで歩く。
「昨日は途中からの記憶がないんだけど、俺…何か言った?」
「え?何かって?」
「いや、言ってないならいいんだ。あれからしばらく飲んでたの?」
「はい。ちょっと飲んでました」
「チスンと?」
「…はい。聞いてないんですか?」
「あいつは今日、撮影で事務所にいないから」
「そうなんですね」
「でもまさか、チスンが来るとはね。よかったね、久美ちゃん」
「はい!」
「なに話してたの?」
「…え…あっ、今度ロケ地に連れて行ってもらう約束しました」
「は⁈うっ、嘘だろ?チスンが連れて行くって⁈」
「はい♡」
「信じられない…まさかあいつが…」
「それにチスンさん、全然冷酷な人じゃなかったですよ」
「…そ、そう?…もしかして連絡先交換したの?」
「してません。私の番号を教えただけです」
「あーなるほどね。あんまり期待しない方がいいよ」
「あ…は、はい…」
「久美ちゃん…」
「はい?」
「いや…何でもない。また近いうちに埋め合わせさせて」
「そんな、いいですよ」
「いいから。じゃ行くね」
翌日。久美子がお店に出勤すると、店長が話しかけてきた。
「あ!クミちゃん‼︎今日クミちゃん指名で予約が入ったよ!」
「本当ですか⁈初指名だ!!」
「それがさ~お客様の名前がホンユさんって男性だったんだけど…まさかあのホンユじゃないよね⁈なんだか声も似ていたような…でも、まさかね~」
「あの…その…まさかです…」
「え⁈嘘…あのホンユなの⁈」
「…はい。今度お店に来るって言ってたし」
「ちょっ、ちょっと…クミちゃん?あなたホンユと知り合いなの⁈」
「は、はい…」
「えーっっ⁈ど、どうやって知り合ったのよ⁈それより今日、あのホンユがここに来るって…キャーッ信じられないっ!」
「て、店長…今日お店終わったら飲みに行きません?その時、話しますので」
「うん、わかった!うわー、ホンユが来るのかー。ドキドキするぅ~」
16時になり、ホンユが来店した。
「こんにちは。ご予約ありがとうございます。今日はどのようになさいますか?」
「はい。今日はカットでお願いします」
「わかりました。そちらに座ってお待ち下さい」
すると店長が久美子の元にやって来た。
「ちょっ、ちょっと…本物のホンユ…カッコいいわ…サインもらって~」
「アハハ。わかりました」
久美子はホンユのカットに取り掛かった。
数日前の帰り際に、ホンユから抱きしめられたことを思い出した。
「どうしたの?顔、赤いよ」
「え?あぁ…何か暑くて…」
「暑いかなぁ…」
「あっ、どのくらい切ります?」
「全体的に1cmくらい切って」
「1cm⁈はい、わかりました」
「あれから、スジンさんから連絡あったりした?」
「あっ、はい…一昨日飲みに行きました」
「また?」
(スジンさん、積極的だなぁ…)
「ただ飲んだだけ?」
「そ、そうですけど」
「ふーん。久美さんって結構、鈍感でしょ」
「え?そ、そうですかね…」
「うん。絶対そう。あ、それより今日って仕事終わったらヒマ?飲みに行かない?」
「あ…今日はすみません。店長と約束があるんです。それに最近ずっと飲んでばかりいるので、しばらくお酒は控えようと思ってます」
「そっか…しばらくってどのくらい?」
「え…っと…2~3日くらい…」
「2~3日⁈ハハハ、久美さん面白いね‼︎了解!じゃそれ以降にまた誘うよ」
ホンユはお店を後にした。
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