真実【完結】

真凛 桃

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1話 忘れ物

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韓国に移住することを決めた久美子は、友達の洋子とソウルに向かった。

ソウルに着き、まだ何もない久美子の新居に荷物を置いて、2人のファンでもあるホンユの行きつけのカフェに行った。

2人でホンユの話をしながらコーヒーを飲んでいると店員さんがやって来た。

「ホンユのファンですか?」

「ハイ」

「ここの席、先ほどまでホンユが座ってましたよ」

「えー⁈そうなんですか⁈」

「はい。では、ごゆっくり」

そう言うと店員さんは戻って行った。

「うわー。もうちょっと早く来てれば会えたのに~」

「本当‼︎ここに座ってたってよ‼︎キャー」

すると久美子がイスの下にある携帯に気付き、手に取った。

「どうしたの?」

「携帯が落ちてた。誰か落としたんだろうね」

「さっきまでいたホンユのじゃない⁈」

「まさかー笑。とりあえずテーブルの上に置いとこ」

2人がコーヒーを飲んでいると、その携帯が鳴った。

「どうする?」

「持ち主からかも知れないし出てみるね」

久美子が電話に出ると目を大きく見開いた。

しばらく話して電話を切った。

「クミ、どうしたの?何だって?持ち主からだったの?」

「た、多分…声からして、ホ…ホンユだった」

「うっ、うそー‼︎本当に⁈」

「うっ、うん。10分後にお店の裏に携帯を持って来て下さいって。うわっ、うわっ、どうしよう~」

「で、でも、ホンユじゃないかも知れないし…」

「まっ、まぁそうだけど…」

10分後。お店の裏に行くと、白い車が停まっていた。
恐る恐る2人が車に近付くと、中からサングラスをかけた長身の男性が降りて来た。

ホンユだ!!

洋子と久美子は固まってしまった。

「さっきの電話の方ですね?」

「はっ、はい」

久美子は震えながら、携帯をホンユに渡した。

「ありがとうございます。助かりました」

「いっ、いえ」

「もしかして…日本の方?」

「そっ、そうです」

「そうなんですね。是非、お礼させて下さい」

(え?お礼?)

「すごく助かりましたから。食事でもご馳走させて下さい」

「そんな…お礼だなんて」

「今晩、空いてませんか?」

「空いてますっ!」

「ハハハ。では、明洞にある○○亭という店に19時に来て下さい。ネットで検索すれば載ってます。オーナーにホンユの連れだと言えば、案内してくれますから」

「わかりました‼︎」

2人と約束をすると、ホンユはその場を去って行った。


そして19時になり、ドキドキしながら2人はお店に行った。

中に入るとオーナーが来て、奥の個室に案内された。

ドアを開けるとホンユと、もう1人…スジンが座っていた。

(ス、スジンも居る~っ…)

ホンユが笑顔で迎えてくれる。

「お2人とも、こちらへどうぞ」

「はっ、はい」

「あの、俺1人じゃ少し心細かったので、先輩のスジンさんを連れて来ました」

「どうも、スジンです。僕のこと分かります?」

「分かります‼︎」

「よかったぁ、アハハ」

次から次に、お酒と料理が運ばれてきた。

「さぁ、今夜はたくさん食べて飲んで下さい」

「は、はい」

4人で乾杯すると、久美子と洋子は緊張をほぐすため、ビールを一気に飲み干した。

「す、すごいねー!2人とも。一気に飲んじゃったよ」

「アハハ。今夜は楽しくなりそう」 

「でも…携帯拾っただけで、こんなにお礼してもらえるなんて…しかもホンユさんとスジンさんと一緒にいるなんて夢みたいです」

「そう言って頂けると嬉しいです。実は以前も携帯忘れたことがあって…その時はデータを盗まれたりして大変な思いしたんです。でも今回は無事に戻ってきたのが嬉しくて、どうしてもお礼したくなったんです」

「そうだったんですね。大変でしたね…」

「お前、そんなことあったのに、また携帯落としたのか⁈ちゃんと気を付けろよ」

「は、はい」

「ところで、お2人のお名前は?」

「洋子と言います」

「私は久美子です」

「久美子さんと洋子さんね。2人はいつまでこっちにいるの?旅行で来てるんだよね?」

「私は明日帰国しますが、久美子さんは帰りませんよ」

「え?帰らないって?どういうこと?」

「移住するんです」

「移住⁈またどうして?」

「元々この国が好きだし、いつか住みたいと思ってたから…」

「へぇー、そうなんだ!行動派でいいねー。ってことは…独身、彼氏なしってこと?かな?」

「はっ、はい」

「仕事は?」

「明後日から美容室で働きます」

「へぇー、美容師さんなんだ⁈今度、俺の髪もやってよー」

「はっ、はい。私でよければ」

「ところで2人は誰のファンなの?」

「もっ、もちろんホンユさんですよ」

「ほんとぉー?」

「ホンユは日本でも人気だもんな。久美子さんは?」

「わ、私は…チスンさんです。あっ、でもお2人のことも好きですよ」

「チスンねー‼︎あいつ悪いとこないからね」

「スジン先輩、チスンさんと仲良いでしょ」

「えっ、本当ですか⁈」

「ま、まぁね。でも呼んであげないよ~」

「…あ、はい…」

「ま、それは冗談だけど。あいつ忙しいからね。それに、警戒心が強いから…呼んでも来ないよ、あいつは」

「確かに、それは言えてる…」

「しかし…かなり飲んだなー」

いつの間にか3時間が経ち、4人はかなりお酒を飲んでいた。

「そろそろお開きにしましょうか」

「そうだな。明日早いんだった。洋子さん、明日は気をつけて帰ってね」

「今度、日本に行く時は案内してね」

「わかりました‼︎今日はおご馳走様でした」

「とりあえず、久美ちゃん番号交換しよう。今度、美容室に行くから」

「あっ、はい」

「お、俺も」

「お前はいいだろ?」

「俺も新しい美容室探してたんで…」

「…わかりました‼︎」

久美子は2人と連絡先の交換が出来て、内心嬉しかった。

そして夢のような食事会は終わり、2人は久美子の家に帰った。

布団に入り、しばらくお喋りしていた。

「こんなことってあるんだね~。今日は幸せ過ぎたっ」

「本当!携帯拾って良かったよ」

「思ったんだけど、スジンさん…クミのこと気に入ってるみたいだったな」

「えー、そんな訳ないよー」

「そぉかなぁ~」

いつの間にか2人は眠りにつき、翌日、洋子は帰国した。



























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