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第2章
22話 ありがとう
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2人は映画館を出た。
「楽しかったね」
「…うん」
「今から何する?」
「マリは何したい?」
「んー…」
テグは時計を見た。
「マリ、どこか景色がいい所知ってる?」
「景色がいい所?山と海どっちがいい?」
「海がいいな。できたら1時間以内で行けるとこがいい」
「海で1時間以内か…」
テグは残りの4時間をマリときれいな場所で過ごしたいと思った。
「あった‼︎タクシーで行けば40分位で着くと思う」
「じゃあ、タクシーで行こう」
2人はタクシーを拾い、海へ向かった。
「お客さん、ちょっと混んでますよ~」
「本当ですね。この道しかないですか?」
「はい。しばらくはこの1本道なので…」
時計ばかり見ているテグを見たマリは、テグの腕時計を手で覆った。
「マリ…」
「着いたら温かいコーヒーでも飲もう」
「…そうだね」
1時間後、やっと海に着いた。
「やっと着いたね~予定では40分後に着くはずだったのに~」
着いた時間は15時10分だった。
2人はコーヒーを買って海辺を歩き、砂浜に座った。
「きれいだね」
「でしょ。夏はすごく多いんだよ」
「本当、きれい」
しばらく2人は海を眺めていた。
「波の音って癒されるね」
「うん」
「テグ…映画館出てから元気ないよ」
「ごめんね。何も考えず楽しい事だけ考えようって自分が言っておきながら、俺が出来てないね…」
「ううん。私も…テグ、気づいてたでしょ?映画館で私が泣いてたの」
「、、、、」
「ごめんね。テグだって辛いのに」
「俺が辛いのは今だけでしょ。マリはずっと辛いんだよ。そこまで考えず、本当ごめん」
「テグ…」
「マリの事を思うと会いに来ない方がよかった」
「そんな事ない‼︎」
「でも…」
「私は嬉しかった。だって本当のこと知ってもテグは私を受け入れてくれたし、それが分かっただけでも充分だよ」
「初めに受け入れていればこんな事にはならなかったのに…本当ごめん」
「仕方ないよ。元はと言えば私のせいだし、私の方こそごめん」
「マリ…俺、怖いよ」
「テグ…」
「18時になったらどうなるの?俺の目の前からマリは居なくなってるの?」
「そうだと思う…テグは自分の居場所に戻ると思うよ」
「忘れたくない…」
「、、、、」
マリは何も言えずしばらく沈黙が続いた。
頭を抱えているテグの隣で、マリは時間が気になり携帯を見た。
17時50分
「えっ、もうこんな時間」
テグも時計を見た。
「マジかよ…」
「あと10分…」
「マリ、これあげる」
テグは腕時計を外し、マリに渡した。
「え…でもこれよく着けていたし大事にしてた時計じゃないの?」
「だからマリにあげるんだ。貰って」
「テグ…ありがとう。大切にする」
「マリの物も何かちょうだい」
「え、私の?えー、何も大した物ないけど…」
「これがいい」
テグはマリがはめている指輪を取った。
「これ安物だよ。いいの?」
「うん。貰っていい?」
「それで良ければ」
「ありがとう」
2人はもう時間を見る余裕すらなくなってきた。
テグはマリを抱きしめた。
「マリ…恋人になってくれてありがとう」
「こちらこそありがとう」
「マ…リ…本当に…」
声を震わせて泣いてるテグを見たマリも涙が溢れ出した。
「本当に…幸せだった」
「…私も…」
「大好きだよ…愛してる」
「…私も愛してる…」
私はこれからもずっと愛してる…
「…ありがとう。マリ」
時刻は18時をまわった。
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