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第1章
8話 ウクの正体
しおりを挟む「彼女と過ごした30日間はすごく幸せだった。その分別れが辛かった。だからもう1度、彼女と過ごせないか頼みに福岡に行って来たら、2度は無理だって。ばあちゃんが…」
ばあちゃん?え⁈もしかして…
「聞いたよ。俺のばあちゃんに会ったんでしょ?」
「ウ、ウクさんのお婆さんってもしかして…」
「ああ。クリスマスイブの日にマリさんが会ったお婆さんが、俺のばあちゃん」
嘘…でしょ…
「驚いたでしょ。俺も昨日ばあちゃんからマリさんの事を聞いてびっくりしたよ」
「で…でもどうして私だってわかったんですか⁈」
「俺のばあちゃんは不思議な力持ってるから、お見通しなんだよ」
「そ…そんな…」
「特別に90日間にしてもらって羨ましいよ」
「あっ、あの、この事は…」
「大丈夫。テグには言わないよ。テグのファンだって事もね」
「え…何?90日間?俺のファン?」
テグッ!!
「テ…テグ…いつ帰って来たんだ⁈いつからそこに…?」
「ついさっきだけど…今の話どういう事?」
「そ、それは…」
「お前のドラマ観て、最近マリさん、お前のファンになったんだって。彼氏にファンって言いづらいだろっ、ねぇマリさん」
「は…はい」
「そうなんだ?じゃあ、90日間って?」
「そ…それは…」
「ウクさんの知り合いが、90日間テグのドラマのDVDを貸してくれるんだって。でしょ?ウクさん」
「そ、そうそう」
「…ふーん」
「俺、そろそろ帰るよ。じゃあな」
ウクは帰って行った。
「マリ」
「な、何?」
「ウク、逃げるように帰って行ったけど」
「そ、そうかなぁ?」
「何もされてない?」
「え?何もされてないよぉ」
マリはホッとした。
「それと、DVD借りなくても俺が出てるドラマなら全部持ってるよ」
「そ、そうなの⁈アハハ…じゃあ借りない」
「あそこの引き出しに全部入ってるから、いつでも観ていいよ」
「わかった!ありがとう。私、そろそろ帰るね」
「えっ、一緒に寝ないの?」
「今日は帰る。たまには帰らないと」
「…わかった」
「じゃあ、また明日ね。おやすみ」
「うん、おやすみ」
布団に入ったマリはなかなか眠れなかった。
まさかウクさんが、あのお婆さんの孫だったなんて…
確か、この事を他の人に知られたら相手に災難が起きるってお婆さん言ってたけど…
ウクさんは大丈夫なのかな…
ウクさんも亡くなった彼女さんと30日間過ごしたって言ってたけど、30日経ったらどんなふうに現実に戻るのかな…
周りの人には私の事が記憶から消えるなら、ウクさんも…?
そういえば今日は1月23日…
え…あと30日
30日後には現実に戻るんだ…
テグ…離れたくないよ…
毎日が幸せで、残された日数の事を忘れていたマリは、後30日だと分かり辛くなった。
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