90日間の恋人【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
3 / 28
第1章

3話 出逢いの経緯

しおりを挟む

12月25日 8:00

目が覚めたマリがリビングに行くと、テグともう1人男性が居た。


「あ、おはよう」

「お、おはよう」

「この人、俺のマネージャー」

「あ…どうも」

「どうも。話は先ほどテグさんから聞きました」

「話って…?」

「隣に住まれるって事です。今日、必要な物を一緒に買いに行きましょう」

「えっ…」

「家具や電化製品は明日中に届くから、他に必要な物をマネージャーと一緒に買いに行って。俺は行けないから」

「え…でも…いいんですか?」

「僕は支払いと足になるだけですから…」

「気にせず行っておいで」

「…はっ、はい…」

「じゃ、ウク、後は頼んだぞ」

「わかった」

「テグ…ど、どこに行くの⁈」

「雑誌の撮影が入ってるから行って来る。夜、帰ったらマリのとこ行くね」


テグはマリとマネージャーを置いて行ってしまった。


何か…気まずい雰囲気…
この人がテグのマネージャーさん…
まだ若そう…
何でタメ口で話してたんだろ…


「マリさん、1時間後に出ましょう。僕の事は気にせずに出掛ける準備をして下さい」


しまった…スッピンだった…


「はっ、はい。わかりました」

「歯ブラシやメイク類は洗面台に置いています。テグから頼まれて用意しました」

「ありがとうございます」


1時間後、マネージャーの運転でデパートに行った。

ある程度、必要な物を買って車に戻った。


「もっとたくさん買ってよかったんですよ。支払いはどうせテグのカードだし」

「い、いえ…充分です」

「じゃ、マンションに戻りますよ」


「あの…1つ聞いていいですか?」

「どうぞ」

「本当にテグのマネージャーですか?」

「そうですよ。あー、僕がタメ口でテグに話してるから?」

「は、はい…」

「テグとは同級生なんです。昔から仲が良くて」

「そうなんですか‼︎だからなんですね」

「仕事関係の人達の前ではちゃんと敬語で話しますよ」

「アハハ…ですよね」

「ところで…昨日から付き合ってるんでしょ?テグと」

「は、はい」

「詳しい事は聞いてないけど、どうやってテグと知り合ったんですか?」

「そ…それは…」


何て言ったらいいの…?


「言いたくなかったらいいですよ…ただ、日本の方とどうやって知り合ったのか気になったから。日本のどちらですか?」

「福岡です…」

「本当⁈僕、親の仕事の関係で少しだけ福岡に住んでた事があるんですよ」

「えーっ‼︎そうなんですか⁈」

「今は祖母が1人で福岡に住んでます」

「え?お婆様が?」

「僕、日本と韓国のハーフなんです」

「えーっ、そうなんですねー‼︎」

「ばあちゃんに久々会いたいな~」

「お婆ちゃんっ子なんですね」

「まぁ…。マリさんって、芸能人と付き合うのは初めてですか?」

「えっ、はっ、はい」

「大変ですよ。絶対にバレない様にしないといけないし、特にテグは売れてるから」

「わかってます。大丈夫です」


限られた期間の付き合いだから…


マンションまで送り届けるとマリに部屋の鍵を渡し、マネージャーは帰って行った。

玄関を開けて中に入ると、家具や電化製品が設置されてあった。


ここまでしてくれたんだ…
それに、こんな広い部屋…

3ヶ月なのに、何だか申し訳ないな…


そう思いながらマリは片付けを始めた。



19:30

チャイムが鳴り、マリが玄関を開けるとテグが立っていた。


「テ、テグ」


マリの心臓はバクバクしている。


「どう?少しは片付いた?」

「う、うん」

「夕食はまだだよね?」

「あ…うん」

「チキンとケーキ買って来たから、俺ん家で一緒に食べよ」

「ケーキ?」

「今日、クリスマスでしょ」


あ…そっか。
テグと過ごせるなんて幸せ…


2人は隣のテグの家へ行った。


「はい」

「あ、ありがとう」


テグはマリにチキンを取って渡した。


目の前で食べるの緊張するし恥ずかしいな…
早く慣れないとな…


「今日どうだった?ゆっくり買い物出来た?」

「うん…ありがとう。それに家具なんかも揃えてくれて」

「何か欲しいのあったら遠慮なく言ってね。俺、一緒に買い物行けないから…」

「うん」


マリはファンとして、テグに聞きたい事がたくさんあった。


「あのっ…テグ…」

「何?」

「好きな…食べ物は何?」

「好きな食べ物?そうだな~肉かな~」


そうなんだ…お肉か…♡


「テグは人気あるからファンレターたくさん来ると思うけど、全部読んでるの?」

「うん。一気に全部読めないから、事務所で時間ある時に読んでるよ」


テグ…やっぱり優しいな…


「休みの日は何してるの?」

「休みの日?今まではジム行ったり運動してたけど、今後はマリと過ごす」


嬉しい♡
嬉し過ぎる♡


「じゃあ…」

「ちょっと待って。俺からも聞いていい?」

「う、うん」

「あの日、飛行機で隣同士になった時、実は怒ってたでしょ?」

「え?隣同士?」

「先月の24日だよ。俺は福岡でのイベントの帰り…マリは福岡からこっちに向かう便で席が隣だったでしょ?俺達が初めて出逢った日だよ」
 

先月の24日?え…じゃあ、私は1ヶ月前にテグと出逢ってたの?
あのお婆さんと会ったのが12月24日…
私は1ヶ月前にタイムスリップしたって事?
…って事は、1ヶ月前から数えて90日間じゃなくて、80日間って事?

マリの頭は混乱していた。


「マリ?」

「えっ、あっ、うん」

「俺がコーヒーをこぼして、マリの服に思い切りかかったから…内心怒ってたでしょ?」

「怒ったりなんか…してないよ」


そんな事があったんだ…


「本当にぃ?結構派手にかかったんだけど…」

「う、うん」


そうやって出逢ったんだ…
でも、その1ヶ月間で何があったんだろ…
連絡先、交換したのかな…

マリは試しに聞いてみた。


「で、でも、よく一般人の私と番号交換したよね?」

「だって、服汚しちゃったし。それにマリは俺の事を知らなかったから」


え…
私はテグの事を知らない事になってたのか…


「服を弁償させてくれないから、せめて食事だけでもと思って行ったけど…話していくうちに信用出来たし、惹かれていった。まさかマリの方から告白してくるなんて思ってもみなかったよ」


そうだったのか…
ファンだってバレない様にしなきゃ…

マリは気を引き締めた。


「私と付き合ってくれてありがとう」

「こちらこそ。俺、仕事が仕事だからあまり色んなとこ連れて行けないし…コソコソ付き合う感じになるけど、大丈夫?」

「うん、全然平気」


ずっと好きだったテグと一緒に居られるだけで幸せだった。


「よかった。気楽に楽しく付き合って行こう」

「うん」


気楽に…そうだよね…
欲を出さずに軽い気持ちで付き合って行こう…


「それと、一応…クリスマスだからプレゼント」

「え?」


テグはマリの後ろに回り、ネックレスを付けてくれた。


「似合ってる!」


テグからのプレゼント…


「あ、ありがとう」



その日の夜、自分の部屋に帰ったマリは、嬉し過ぎてテグからもらったネックレスを握りしめて眠りについた。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

メ○○○女の○料理人録

あがつま ゆい
ファンタジー
旧市街地区に最近できた、王国では珍しい人間の女が切り盛りする料理店。 そこは異国のとてつもなく美味い料理を出す店なのだがちょっとわけありなお店だった。 これはそんな店に来る人々と店主の日常を描いたお話。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...