ダンナ様はエスパー？

第12章 3人のばぁば！

２３

「ごめんなさい、ちょっと…」
　灯里はあわてて、ベッドから滑り降りると、
「ちょっと」
チカの腕を引くと、部屋の外へと連れ出した。


「もう、退院したのかと思った」
　廊下の突き当りまで連れ出すと、チカに話しかける。
彼女はいつもと違って、きちんと服を着て、お化粧までしている。
まるで別人のようで、まぶしく見えた。
「あっ、そうなんだけどねぇ、最後にやっぱり、顏だけでも見たいと
　思って…」
ニコニコと微笑みながら、灯里を見つめる。
「そうなんだぁ～わざわざありがとう」
灯里も、本当のところ、もう1度、話がしたいと思っていたので、
これは棚ぼただな、と大いに喜ぶ。
「じゃあダンナさんは、待っているってこと？」
「うん…荷物を持って、ナースステーションに、挨拶に行ってる」
律儀な人だ…と灯里は思う。
「そう…」
　いつも、気が利かない…と、さんざんこき下ろしていたけれど…
とってもいいダンナさんじゃあないのよぉ
そう灯里が感じていた。

「来てくれるなんて…思ってもいなかったわ」
　思わず言い訳のように、灯里が言うと
「どうして、そう思うのよぉ」
ケラケラとチカが笑う。
「そりゃ、やっぱりどうしても…会ってから、帰りたかったの」
そう正直に言うチカに、
（やっぱり、行けばよかったんだ）
灯里はそう気付いていた。
「ねぇ、必ず、連絡してきてね」
念押しするように、チカが言う。
「うん」
そう言いながらも、本当にそれでいいのか、と心の中でそう思っていた。