ダンナ様はエスパー？

第11章 トンネルを抜けて…

５

　その夜は、椅子に座る久志と、手をつないで眠った。
こんな所で寝るのは、灯里にとっては初めてだけれど、
寂しくないように、と彼が言い出したのだ。
「ずっと手をつないでいたら、疲れるんじゃない？」
少し気になったけれど、
「大丈夫」
全然！
明るくそう言うので、それに甘えることにした。
「じゃあ…今夜だけね！」
だって…やっぱり久志さんには、ベッドで寝て欲しい…
そう思ったからだ。
まるで付き合い始めの、恋人同士のように、手をつないだまま、
ベッドに横たわる。
「おやすみ」
久志の声を聞くと、灯里は何だか、ホッと身体の緊張が、ほぐれてくるのを
感じた。


　小さなベッドサイドのランプの灯り越しに、仲良く手をつないで
眠る2人を見て…
見回りの看護師さんは、黙ってカーテンを閉めた。


「アカリ、お疲れ様！」
　翌日、いの一番で駆け付けたのは…やはり親友のアリサだった。
「ありがとう…でも、仕事はどうしたの？」
バリキャリのアリサにしては、珍しい…
まさか無理して、抜け出してきたのか、と灯里が眉をひそめると
「あっ、午前中、休みをもらったの！」
こういう時くらい、融通利いてくれなきゃねぇ～
「それに、気になって、仕事にならないし！」
あっけらかんとそう言うと、アリサはいたずらっぽい顔を
してみせた。
「そんな…いいのよ？
　お休みの時でも…」
申し訳なくて、そう言い返す。
「何言ってるのよぉ」
珍しくアリサは、ちょっとムキになったように、口をとがらせる。
「親友でしょ？
　こんな時くらい、役に立ちたいのよ」
さして困る様子もなく、アリサはキッパリと言い放った。