384 / 462
第10章 捨てる神あれば拾う神あり
60
しおりを挟む
「オバサンに初めて会って…母親って、本当はこんなものなのかなぁって、
わかったの。
母さんは、自分が大事だから…私のことは、見てないのよ。
自分の想いを貫き通そうとするのね。
でも…陶子さんは、違う」
言葉にしてみて初めて…灯里は自分の本当の気持ちに、気が付いた。
すっとまっすぐな瞳を、アリサに向けると
「私、陶子さんみたいな、お母さんになりたい」
そう打ち明ける。
「陶子さん?
陶子さんは…子供がいないはずよ」
「だけど…陶子さんみたいな人に…」
アリサには、自分のことをわかって欲しい、と灯里は思う。
彼女も灯里の表情を見ているうちに、彼女の言わんとすることを、
理解したようだった。
「陶子さん…灯里の気持ちを聞いたら、きっと喜ぶわ」
大きくうなづくと、灯里の手を、ギュッと握りしめる。
「でもね、母さんも、反面教師という意味では…
私にとって、よかったのかもしれない」
灯里は落ち着いた表情で、そう言う。
今は、母親に対して、うらみの気持ちはない。
あれはあれで…おそらくは、不器用ながらも愛情表現だったのだ、
と思うからだ。
「私…いい母親になれるかなぁ」
ポツン…とそうつぶやくと、
「なれるわよ!」
アリサはギュッと、灯里の手を握り締めると、力強く答える。
「灯里なら、きっと大丈夫!
私が保障する!」
アリサはなぜだか、自信満々にそう宣言した。
わかったの。
母さんは、自分が大事だから…私のことは、見てないのよ。
自分の想いを貫き通そうとするのね。
でも…陶子さんは、違う」
言葉にしてみて初めて…灯里は自分の本当の気持ちに、気が付いた。
すっとまっすぐな瞳を、アリサに向けると
「私、陶子さんみたいな、お母さんになりたい」
そう打ち明ける。
「陶子さん?
陶子さんは…子供がいないはずよ」
「だけど…陶子さんみたいな人に…」
アリサには、自分のことをわかって欲しい、と灯里は思う。
彼女も灯里の表情を見ているうちに、彼女の言わんとすることを、
理解したようだった。
「陶子さん…灯里の気持ちを聞いたら、きっと喜ぶわ」
大きくうなづくと、灯里の手を、ギュッと握りしめる。
「でもね、母さんも、反面教師という意味では…
私にとって、よかったのかもしれない」
灯里は落ち着いた表情で、そう言う。
今は、母親に対して、うらみの気持ちはない。
あれはあれで…おそらくは、不器用ながらも愛情表現だったのだ、
と思うからだ。
「私…いい母親になれるかなぁ」
ポツン…とそうつぶやくと、
「なれるわよ!」
アリサはギュッと、灯里の手を握り締めると、力強く答える。
「灯里なら、きっと大丈夫!
私が保障する!」
アリサはなぜだか、自信満々にそう宣言した。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
【完結】君と国境を越えて
朱村びすりん
ライト文芸
イギリス人の両親を持つ高校一年生のイヴァン・ファーマーは、生まれは日本、育ちも日本、習慣や言語、そして心さえも「日本人」として生きてきた。
だがイヴァンは、見た目や国籍によって周囲の人々に「勘違い」をされてしまうことが多々ある。
自らの人種と心のギャップに幼い頃から疑問を持ち続けていた。
そんなある日、イヴァンの悩みを理解してくれる人物が現れた。
彼が働くバイト先のマニーカフェに、お客さんとして来店してきた玉木サエ。
イヴァンが悩みを打ち明けると、何事にも冷静沈着な彼女は淡々とこう答えるのだ。
「あなたはどこにでもいる普通の男子高校生よ」
イヴァンにとって初めて、出会ったときから自分を「自分」として認めてくれる相手だった。進路についても、深く話を聞いてくれる彼女にイヴァンは心を救われる。
だが彼女の後ろ姿は、いつも切なさや寂しさが醸し出されている。
彼女は他人には言えない、悩みを抱えているようで……
自身のアイデンティティに悩む少年少女の苦悩や迷い、その中で芽生える特別な想いを描いたヒューマンストーリー。
◆素敵な表紙絵はみつ葉さま(@mitsuba0605 )に依頼して描いていただきました!
葛城依代の夏休み日記~我が家に野良猫がきました~
白水緑
ライト文芸
一人ぼっちの夏休みを過ごす依代は、道端で自称捨て猫を拾った。
二人は楽しい共同生活を送るが、それはあっという間に終わりを告げる。
――ひと夏の、儚い思い出。
月の女神と夜の女王
海獺屋ぼの
ライト文芸
北関東のとある地方都市に住む双子の姉妹の物語。
妹の月姫(ルナ)は父親が経営するコンビニでアルバイトしながら高校に通っていた。彼女は双子の姉に対する強いコンプレックスがあり、それを払拭することがどうしてもできなかった。あるとき、月姫(ルナ)はある兄妹と出会うのだが……。
姉の裏月(ヘカテー)は実家を飛び出してバンド活動に明け暮れていた。クセの強いバンドメンバー、クリスチャンの友人、退学した高校の悪友。そんな個性が強すぎる面々と絡んでいく。ある日彼女のバンド活動にも転機が訪れた……。
月姫(ルナ)と裏月(ヘカテー)の姉妹の物語が各章ごとに交錯し、ある結末へと向かう。
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
【完結】美容講座は呑みながら
藤香いつき
ライト文芸
《綺麗になりたい大人女子×美容系青年の友情ストーリー》
安井レイコは彼氏との結婚に備え、質素倹約な毎日だった。
しかし、結婚間近のはずが彼氏を後輩に寝取られたらしい。
失恋直後の荒れた心で出会ったのは、マンションで隣に住む——アルビニズムの美青年。
「魔法をかけてあげる」
美容系インフルエンサーの彼にゆるく美容指導されつつ、美味しいお酒とつまみに友情を育んでいく——ゆるゆるな、実話をもとにしたお話。
※ティアの『美容指導』について
元エステティシャンと美容皮膚科医の方からアドバイスを受けておりますが、本作品はあくまで物語としてお楽しみください。
凪の始まり
Shigeru_Kimoto
ライト文芸
佐藤健太郎28歳。場末の風俗店の店長をしている。そんな俺の前に16年前の小学校6年生の時の担任だった満島先生が訪ねてやってきた。
俺はその前の5年生の暮れから学校に行っていなかった。不登校っていう括りだ。
先生は、今年で定年になる。
教師人生、唯一の心残りだという俺の不登校の1年を今の俺が登校することで、後悔が無くなるらしい。そして、もう一度、やり直そうと誘ってくれた。
当時の俺は、毎日、家に宿題を届けてくれていた先生の気持ちなど、考えてもいなかったのだと思う。
でも、あれから16年、俺は手を差し伸べてくれる人がいることが、どれほど、ありがたいかを知っている。
16年たった大人の俺は、そうしてやり直しの小学校6年生をすることになった。
こうして動き出した俺の人生は、新しい世界に飛び込んだことで、別の分かれ道を自ら作り出し、歩き出したのだと思う。
今にして思えば……
さあ、良かったら、俺の動き出した人生の話に付き合ってもらえないだろうか?
長編、1年間連載。
大江戸ロミオ&ジュリエット
佐倉 蘭
歴史・時代
★第2回ベリーズカフェ恋愛ファンタジー小説大賞 最終選考作品★
公方(将軍)様のお膝元、江戸の町を守るのは犬猿の仲の「北町奉行所」と「南町奉行所」。
関係改善のため北町奉行所の「北町小町」志鶴と南町奉行所の「浮世絵与力」松波 多聞の縁組が御奉行様より命じられる。
だが、志鶴は父から「三年、辛抱せよ」と言われ、出戻れば胸に秘めた身分違いの恋しい人と夫婦になれると思い、意に添わぬ祝言を挙げる決意をしたのだった……
ピアノの家のふたりの姉妹
九重智
ライト文芸
【ふたりの親愛はピアノの連弾のように奏でられた。いざもう一人の弾き手を失うと、幸福の音色も、物足りない、隙間だらけのわびしさばかり残ってしまう。】
ピアノの響く家には、ふたりの姉妹がいた。仲睦ましい姉妹は互いに深い親愛を抱えていたが、姉の雪子の変化により、ふたりの関係は徐々に変わっていく。
(縦書き読み推奨です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる