ダンナ様はエスパー?

daisysacky

文字の大きさ
上 下
379 / 462
第10章  捨てる神あれば拾う神あり

   55

しおりを挟む
「でも…どうして?」
 こんな風に、彼と話すのは、初めてなのかもしれない。
灯里の眠気はすっかりどこかへ行って、可能ならば、
一晩中でも、こうして話をしていたい…とさえ久志は思う。
「初めて、キミを見た時…
 あぁ、この子は、とても誠実に生きているんだなぁ~
 そんな風に、思ったんだ。
 そうして、それがいいな、と思ったんだ。
 そうしたら、君から目が離せなくなったんだ」
うっとりとした表情で、久志がそう言う。
「そんな…買い被りすぎですよ!」
 私のほうこそ、久志さんにふさわしくない…
陰でこそこそと見ていた…というのに!
(それって、一歩間違えたら、ストーカー?)
マズイじゃないか…

 すると久志は、灯里の方を見て笑う。
「何だかボクたち…
お互いに、勘違いをしてたんだねぇ」
優しく微笑む。
「あの頃キミは…とってもまぶしかったんだ」 
ふっと遠い目をする。
「キミがとても、まぶしかったんだ。
 ボクは自分が、とても汚い存在のような気がして…
 キミのことが、羨ましかったんだ」
 キミがとても、輝いて見えた…
そう語る久志は、まるでまぶしいものを見るように、
目を細める。
灯里は何だか恥ずかしくなり、そっと目をそらした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

記憶屋

卯月青澄
ライト文芸
僕は風間。 人の記憶(思い出)を消す事の出来る記憶屋。 正しく言うと記憶、思い出を一時的に取り出し、『記憶箱』と呼ばれる小さな木箱に閉まっておく事が出来るというもの。 でも、それはいつかは本人が開けなければならない箱。 僕は依頼のあった人物に会いに行き、記憶を一時的に封印するのが仕事。 そして今日もこれから依頼人に会いに行く。

松田さん家の愛犬はめちゃくちゃデカイ

ミクリ21
ライト文芸
お隣の松田 翡翠と、松田さん家の愛犬アリステリア(愛称アリー)と主人公の三波 葵の話。

となりのソータロー

daisysacky
ライト文芸
ある日、転校生が宗太郎のクラスにやって来る。 彼は、子供の頃に遊びに行っていた、お化け屋敷で見かけた… という噂を聞く。 そこは、ある事件のあった廃屋だった~

一歩の重さ

burazu
ライト文芸
最年少四段昇段を期待された長谷一輝は最年少四段昇段は果たせず16歳の秋に四段昇段を決めたものの、プロの壁は厚く、くすぶっていた。これはそんな彼がプロの頂点を目指していく物語である。 この作品は小説家になろうさん、エブリスタさん、ノベルアッププラスさん、カクヨムさんでも投稿しています。

輪廻の果てに咲く桜

臣桜
ライト文芸
「泥に咲く花」を直したものです。さらにこのお話を直したものがあります。それは後日公開致します。 現代にひっそり生きる青年吸血鬼・時人(ときひと)。吸血鬼が故に五感が発達しすぎ、人に関心を持てない。そんなグレーの世界に色を与えたのが、音大生の葵(あおい)だった。二人は結婚を視野に幸せな付き合いをしていたが――。 ※数年前に書いたお話なので、色々設定が破綻している箇所などはご容赦くださいませ。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

頭取さん、さいごの物語~新米編集者・羽織屋、回顧録の担当を任されました

鏡野ゆう
ライト文芸
一人前の編集者にすらなれていないのに、なぜか編集長命令で、取引銀行頭取さんの回顧録担当を押しつけられてしまいました! ※カクヨムでも公開中です※

別れの曲

石田ノドカ
ライト文芸
 主人公・森下陽和は幼少の頃、ピアノを弾くことが好きだった。  しかし、ある日医師から『楽譜“だけ”が読めない学習障害を持っている』と診断されたことをきっかけに、陽和はピアノからは離れてしまう。  月日が経ち、高校一年の冬。  ピアニストである母親が海外出張に行っている間に、陽和は不思議な夢を視る。  そこで語り掛けて来る声に導かれるがまま、読めもしない楽譜に目を通すと、陽和は夢の中だけではピアノが弾けることに気が付く。  夢の中では何でも自由。心持ち次第だと声は言うが、次第に、陽和は現実世界でもピアノが弾けるようになっていく。  時を同じくして、ある日届いた名無しの手紙。  それが思いもよらぬ形で、差出人、そして夢の中で聞こえる声の正体――更には、陽和のよく知る人物が隠していた真実を紐解くカギとなって……  優しくも激しいショパンの旋律に導かれた陽和の、辿り着く答えとは……?

処理中です...