ダンナ様はエスパー?

daisysacky

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第10章  捨てる神あれば拾う神あり

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 いっそのこと、この人が本当のお母さんならば、よかったのに…
灯里が半ば本気で、そう思っていた時…
この人もまた、別の意味で、同じことを思っていた。

「陶子さんに、会ったんだって?」
 この日は休みを取った、と言うので、のんびりと過ごしている。
相変わらず、中々シッポをつかませてはくれないけれど、
それでもいいか…と思えるようになっていた。
「ね、久志さん。陶子さんと、知り合いなの?」
 何とか、うまく聞き出そう…とがんばるけれども、久志はニヤニヤするばかりで、
「その手には、のらないよぉ」
子供っぽく言うと、大げさに肩をすくめてみせる。
(何で、教えてくれないの?)
そう思うけれども、慎重に彼の顔を見ながら
「陶子さんって…いい人ね」
無難なところを、さり気なく言ってみる。
たちまち久志は食いついて
「そうだろう?
 あの人は、いつだって、誰に対しても、そうなんだよ」
自分が褒められたように、何だか嬉しそうな顔をする。
 それがまた…こちらが妬けてきそうなくらいに、にやにやするので、
「それならしばらく、帰って来なくてもいいよ」
わざとすねたように、灯里はフンと横を向いた。

「あれ?」
 もしかして、クスリが効きすぎたのか?
計算外の反応に、久志は大げさに驚いた顔をすると
「なんだ、アカリちゃん!
 ヤキモチ、妬いているの?」
嫌だなぁ~
ヘラヘラと笑うので、まさか久志さん、酔っぱらっているの、と
何だか灯里はムシャクシャしてくる。
(何で、私が?
 人の気も、知らないで!)
すっかりオカンムリで、
「そんなんじゃないわよ!」
思わず突っかかって、言い返す。
 何だか、こんな自分も嫌いだ…
 自分は、陶子さんと比べると、あまりにも幼稚で、子供っぽい。
あんな風には出来ないし、無理だ。

 灯里はたちまち、みじめな気持になってきた。
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