ダンナ様はエスパー?

daisysacky

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第10章  捨てる神あれば拾う神あり

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 こんな楽しいことは、生まれて初めてかもしれない…
灯里はしみじみとそう思う。
 母さんとは、一緒にショッピングを楽しむということはなく、
必要な物をただ買い与える…というか、たとえ一緒に行っても、
自分の好きな物を買ってもらえることは、ほとんどなかった。
通過儀礼…というような、他に寄り道もせず、
お茶をすることも、ウィンドウショッピングをすることなく、
真っすぐに行き、まっすぐに帰る…
というただそれだけだった。
それでも、子供の頃は嬉しかった。
自分のために、買ってもらえる、ということ自体が
滅多にないことだったから。

「それはいるの?
 本当に必要なのか、よく考えなさい」
しつこく、呪文のように繰り返し言われたものだ。
あれが可愛い、とか
あれは、友だちが持っていた、とかそんなことを言おうものなら
「人は人、
 自分は自分。
 人のものを、羨ましがったらダメよ」
口を酸っぱくして、言われたものだ。
 そんなこともあり、灯里は物をねだることも、衝動買いすることも…
いけないことだ、と大人になるまで思い込んでいた。

「オバサンはね、女の子がいたら、こんな風にお買い物をするのが、
 夢だったのよ」
ありがとう…と言われると、返って恐縮してしまう。
お財布を出そうとしたら、
「ダメよ、今日は私がプレゼントすると思って、来たのだから」
散々押し問答の末、ついに灯里が折れるハメになった。
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