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第9章 やっぱり、あなたは…?
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灯里は黙ったまま、ペコリと頭を下げる。
するとアリサが、フォローするように、灯里に近付くと
「そうよぉ。灯里は、可愛いでしょ?」
サッと灯里の肩に、手を回す。
何となく…透明の膜がかかったように、何となく隔たりを感じる。
さらには、落着きなさや、居心地の悪さを感じて…
できれば今この瞬間、出来れば逃げ出したいくらいだ。
(なんでこんなこと…頼んだのかなぁ?)
出来ることなら、すべてのことをチャラにしてしまいたい…
灯里は、そんなことを考えていた。
今さらのように、久志はこの人と一緒の職場で、働いているんだ…と思う。
「奥さんも、同じ会社だったんですって?」
気さくな感じで、その人は話しかける。
「えぇ、まぁ~」
この素敵な女性と比べると、何だか自分が、子供のように思える。
こんな素敵な人がいるのなら…
どう考えても、自分なんてかないっこない…
そう思うと、何だか灯里はみじめな気持になる。
「やっぱり、噂通りの可愛い人ね!」
その人は手放しで、灯里を褒める。
それでも何だか…褒められれば褒められるほど、灯里の心は暗く落ち込むのだった。
自分には、誇れるものが、何もない。
こんな…ボサボサの頭だし、ゴムの伸びきった靴下を履いて
シミだらけのスカートをはいている。
余裕がなくて、こんな格好をしているけれど、誰の目でもあきらかに…
この女性の方が素敵に見えるのに、決まってる…
誰が見たって、勝負が決まっている…と、彼女は静かにそう思った。
するとアリサが、フォローするように、灯里に近付くと
「そうよぉ。灯里は、可愛いでしょ?」
サッと灯里の肩に、手を回す。
何となく…透明の膜がかかったように、何となく隔たりを感じる。
さらには、落着きなさや、居心地の悪さを感じて…
できれば今この瞬間、出来れば逃げ出したいくらいだ。
(なんでこんなこと…頼んだのかなぁ?)
出来ることなら、すべてのことをチャラにしてしまいたい…
灯里は、そんなことを考えていた。
今さらのように、久志はこの人と一緒の職場で、働いているんだ…と思う。
「奥さんも、同じ会社だったんですって?」
気さくな感じで、その人は話しかける。
「えぇ、まぁ~」
この素敵な女性と比べると、何だか自分が、子供のように思える。
こんな素敵な人がいるのなら…
どう考えても、自分なんてかないっこない…
そう思うと、何だか灯里はみじめな気持になる。
「やっぱり、噂通りの可愛い人ね!」
その人は手放しで、灯里を褒める。
それでも何だか…褒められれば褒められるほど、灯里の心は暗く落ち込むのだった。
自分には、誇れるものが、何もない。
こんな…ボサボサの頭だし、ゴムの伸びきった靴下を履いて
シミだらけのスカートをはいている。
余裕がなくて、こんな格好をしているけれど、誰の目でもあきらかに…
この女性の方が素敵に見えるのに、決まってる…
誰が見たって、勝負が決まっている…と、彼女は静かにそう思った。
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