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第8章 私を探さないで…
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「母親がね」
唐突に、ポツンと久志が口にする。
「母親が…もう彼女が、帰って来ないわよ、
愛想をつかされたのよ、なんて言うから…」
アリサに向かって、そう言った。
何でそんなことを、自分に言うのだ、とアリサは不思議に思うけれど…
久志は静かな表情で、アリサを見る。
(もしかして…気にしてるの?)
それは、意外な一面だった。
「母にしてみれば、灯里は息子を奪った、生意気な女ってことなんだろうね」
まるで他人事のように言う。
(ちょっと…ずいぶんな言い方!)
何か言いたそうなアリサに向かい、寂しそうな目付きで見返すと
「だけどボクは…そんなことは、どうでもいいんだ。
母さんに、自分のパートナーを決められたくないんだ」
キッパリとそう続けた。
親友のダンナさん…
特に好きとか、嫌いとか、そういう感情はないけれど…
こんな風に話をしたのは、初めてだった。
もちろん灯里から、厄介なお姑さんの話を聞かされてはいた。
話を聞く限り…息子にベッタリなところがある、とは聞いていたけれど…
ここまでこじれているとは、さすがにアリサは知らなかったので
「それは…灯里も、ストレスが溜まっていたのでしょうね」
彼女のことを、少しでも理解してあげたい…と思っていた。
「灯里から…何か聞いていない?」
やはり、聞いて来る。
「ごめん…まったく聞いてないわ」
あぁ見えて、結構灯里は我慢強いのだ。
久志のことを考えて…言えなかったのかもしれない。
「そうか…」
久志は落胆を、隠そうとはしなかった。
唐突に、ポツンと久志が口にする。
「母親が…もう彼女が、帰って来ないわよ、
愛想をつかされたのよ、なんて言うから…」
アリサに向かって、そう言った。
何でそんなことを、自分に言うのだ、とアリサは不思議に思うけれど…
久志は静かな表情で、アリサを見る。
(もしかして…気にしてるの?)
それは、意外な一面だった。
「母にしてみれば、灯里は息子を奪った、生意気な女ってことなんだろうね」
まるで他人事のように言う。
(ちょっと…ずいぶんな言い方!)
何か言いたそうなアリサに向かい、寂しそうな目付きで見返すと
「だけどボクは…そんなことは、どうでもいいんだ。
母さんに、自分のパートナーを決められたくないんだ」
キッパリとそう続けた。
親友のダンナさん…
特に好きとか、嫌いとか、そういう感情はないけれど…
こんな風に話をしたのは、初めてだった。
もちろん灯里から、厄介なお姑さんの話を聞かされてはいた。
話を聞く限り…息子にベッタリなところがある、とは聞いていたけれど…
ここまでこじれているとは、さすがにアリサは知らなかったので
「それは…灯里も、ストレスが溜まっていたのでしょうね」
彼女のことを、少しでも理解してあげたい…と思っていた。
「灯里から…何か聞いていない?」
やはり、聞いて来る。
「ごめん…まったく聞いてないわ」
あぁ見えて、結構灯里は我慢強いのだ。
久志のことを考えて…言えなかったのかもしれない。
「そうか…」
久志は落胆を、隠そうとはしなかった。
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