ダンナ様はエスパー？

第8章 私を探さないで…

１４

「あのね、下まで送ろうか？と聞いたけど、断られたのよ」
　相変わらず、いつものように、口が軽い。
「それはいつ？」
思わず久志が、口をはさむと
「そうねぇ～あなたが出かけてから、すぐよ！」
こうして2人に聞かれるのが、まんざらでもないらしく、満足そうに
うふふ…と笑う。
　もしかして、この状況を楽しんでいるのか？
好奇心たっぷりの顔をして、思わせぶりな顔をしている。
　だけど、そんなことを気にしている場合じゃあない。
「じゃあ、心当たりは？」
アリサが久志に聞いてみると
「うーん」とうなるばかりだ。
キョロキョロとその様子を、お隣さんは眺めて、
「そうねぇ～」
なぜか急にいいアイディアが浮かんだ、という顔になり
「それなら、管理人さんに、聞いてみれば？」
返事も待たずに、スタスタと管理人室へと向かった。

「えっ」
　さすがにまだ何もわからないのに…
管理人さんにまで、迷惑はかけられない。
たじろぐ久志をさしおいて、お隣さんは堂々と先に進む。
ズンズンズンと管理人室の前に行くと、
トントントン…
ためらうことなく、扉をノックした。
数回ノックするけれど、応答はない。
「清掃中かなぁ」
ややホッとした顔で、ヒサシがポツリと言う。
「どうも、そうみたいね」
残念そうに、お隣さんも言うけれど…
「あっ、そういえば」
いきなり手を止めた。
「そういえば…何かタクシーに乗ってたみたい」
「えっ」
まさか、そこまで見てたとは…と、久志はさすがに面食らった。