ダンナ様はエスパー?

daisysacky

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第8章  私を探さないで…

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  なんで急に、こんな気持ちになったのか…
実をいうと、自分でもよくわからないのだ。
最近ホルモンバランスのせいか…自分の感情の波を押さえられないのだ。
 なんと自分は、わがままなのだろう…
心の中でそう思うけれど、どうしても止められないのだ。
自分で、自分がわからなくなる…
なんということなんだ、と灯里は呆然とした。

 いつもは勘のいい久志も、さすがに妊婦の心理は、わからないようだ。
それが良かったのか、残念なことなのか?
何だか頭の奥がしびれて、ボゥッと気が抜けたような状態だ。
 さらに…何回も何回も、彼女は考えていた。
もはやどうしても…
はやる心を、止めることは、出来ない。
(わかった、旅に出よう。
 そうしたらきっと落ち着くわ)
そう灯里は、心に誓った。

 こんなにいいダンナさんが、いるのに…
なんでこんなに、ワガママなんだろう?
けれども、灯里には、止められない。

 キッカケは…ほんのささいなものだった。
灯里の数少ない友人のうちの1人で、遠方に引っ越した人から、手紙が
届いた。
 本来ならば…
そんなことは、まずない…と、あきらめていた。

 だがそこに…灯里の心を引き付けてやまない1文が、ささいなことで、
落ち込み気味の彼女を、優しく語りかけてくれた。
『海のきれいな場所だから…1度遊びに来てください』 
社交辞令であることは、もちろん、わかってはいたけれど、
ためしに連絡をしようとしたら、すぐにつながった。
「なぁに?
 全然平気よ!
 そんなの気の迷いよ、
美味しい空気を吸って、美味しいものを食べたりしたら…
きっとまた、元気になるって!」
電話の相手は、特別仲がよかったわけでもないのだが…
それでもこの時ばかりは、なぜか猛烈に、会ってみたかった。
「いいの?」
初めは図々しいかなぁ~と、思ったけれど、
子供が生まれたら、ゆっくり旅も出来ないわよ…と強く説得
されたので、彼女の心も大きく動いたのだった。







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