ダンナ様はエスパー？

第６章 久志のヒミツ？

３８

「いや、おかあさんのせいじゃないわ」
　つい黙っていられず、思わず灯里は口をはさんだ。
「いや、そうなんだ」
だが珍しくガンとして、久志は引き下がらない。
「いきなり、脅かしたりするから…」
久志は寂しそうな顔をする。
人のうわさ話をするのも、苦手な久志。
自分の身内の悪口は、出来るだけ言いたくはないのだろう。
（久志さんは、優しいから）
　灯里は、そんな久志のことが、大好きだ。
彼は灯里の目を、じぃっと見つめると、静かな口調で
続ける。

「今まで結婚できなかったのも…
　もちろん、自分の人間性に、問題があるけれど…
　母が相手の子のことで、
　ケチをつけるから…
　いずれにしても、逃げられる…というのもあるし…
　どっちにしろ…あの母がいる限り
　ボクは結婚が出来ないんだ、と思ってたんです」
　久志は穏やかなまなざしで、2人に向かって話し続ける。

「久志さん…」
思わず灯里が、声をもらすと
「だから灯里には、本当に感謝してるんです」
そう言うと、彼女を見つめる。
「だから、何がなんでも、灯里のことは守らないといけないんです」
キッパリとそう言った。

　こんな久志は初めてだ…
灯里はそう思う。
いつもは穏やかに微笑むだけで、決して弱音など吐いたりはしない…
　アリサは（何かあると思っていたけど、こういうことだったのね）
妙に納得している。
「だから、アリサさん！お願いします。
　灯里の相談相手に、なってやってください」
ボクは男だから、わからないこともあるし、
無神経なことを、言うかもしれない…
即座にペコリ…と頭を深く下げる。
「わかりました」
キッパリとアリサは、うなづいた。