ダンナ様はエスパー？

第６章 久志のヒミツ？

３５

　　アリサの勢いのすごさに、圧倒されて…
玄関口で、立ち話をしていたことに、ようやく気付く。
あわてて灯里が、スリッパを差し出すと
「あぁ、もういいから！」
自分でする、と言い張り、かがもうとする灯里を、ムリヤリ押しとどめた。
「もっと自分の身体のことを、自覚しなさいよね！」
さっきから、アリサに怒られてばかりだ。
これが、彼女なりの優しさだ、とわかってはいるけれど、肩をすくめて
「それは…久志さんにも言われた」
申し訳なさそうに言う。
「やっぱりね！」
ようやくアリサはクスリと笑う。
「そう」
靴を脱ぐと、スタスタとリビングへと向かう。
「それで、久志さんは？」
いるもの、と思ってきたのか、どこにいるの？とグルリと見回している。
「今日はね、会社にちょっと寄ってから、買い物をしてくると言ってたわ」
「あいかわらず…出来たダンナさんね！」
マメだなぁ～
感心したように、アリサが言うと、ようやくリビングのソファーに、荷物を置いた。
「そうなのよぉ」
灯里は灯里で、久志のことを褒められたのが嬉しいのか、うなづきながら
満足そうに微笑む。

「さ、今日はどうしようかな？」
早速腕まくりをすると、アリサは荷物からエプロンを取り出した。
「えっ、話をしに来ただけじゃないの？」
仕事帰りで、疲れてるでしょ、と灯里が遠慮するように言うと…
「その原因は、なんだっけ？」
ハキハキとアリサは彼女に向かって言う。
　その時、駐車場から、ジャリの音が聞こえる。
「あっ、帰ってきた」
ハッとして、灯里が言うと、アリサも振り返る。
「いい、大丈夫よ！
　私も言っておきたいことがあるし」
真剣な面持ちで、アリサは大きくうなづいた。