ダンナ様はエスパー?

daisysacky

文字の大きさ
上 下
144 / 462
第5章  誰のものでもない私…

   12

しおりを挟む
(なんだ、そうよね)
 何だかすっかり、憑き物が落ちたように、母親の自分に対する気持ちが、
まるで透けて見えるようだった。
気になるけれど、それ以上はあえて、灯里は聞かないと、心に決める。

「あなた…ちゃんとできているの?
 久志さんに、迷惑かけたりしてない?」
 いつもは、あの男…と言っていたくせに、今度は名前で呼ぶんだ…
と冷めた気持ちで思う。
だが相変わらず、灯里の身体のことを、聞こうとはしない。
気にならないのだろうか?
 それにしても、どうしていつもこんな風に、上から目線なのだろう。
(一体、何しにここへ来たの?)
やはり灯里の胸が、シクシク痛んだ。

 だがそんな彼女の気持ちには、気が付かないようで、
「それで…あっちのおかあさんは、何と言ってるの?」
すぐに話をそらす。
「あの人…けっこう気難しいところがあるから、ちゃんとしないと
 嫌われるわよ」
自分のことはさておいて、灯里に向かって、重々しい口調で言う。
 この人は…ちゃんと自分のことを、理解しているのだろうか?
その辺りのことは、突っ込む勇気がない。
それよりも…この人の本心が知りたい、と思う。
本当に本心から、自分のことを心配してくれているのだろうか?
 灯里はしばし、考え込んだ。

 そうして子供の頃のことを、思い出す…
「母さん!」と、差し出した灯里の幼い手を、
1度はつかもうと、伸ばすのに…
すぐに、すぃっと引っ込める。
そんな人なのだ。
実の母親だというのに、今まで自分が、どれほど傷つけられてきたのか…
今、目の前にいるこの人は…ちゃんとわかっているのだろうか?
灯里はボンヤリと、そんなことを考えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

北野坂パレット

うにおいくら
ライト文芸
 舞台は神戸・異人館の街北野町。この物語はほっこり仕様になっております。 青春の真っただ中の子供達と青春の残像の中でうごめいている大人たちの物語です。 『高校生になった記念にどうだ?』という酒豪の母・雪乃の訳のわからん理由によって、両親の離婚により生き別れになっていた父・一平に生まれて初めて会う事になったピアノ好きの高校生亮平。   気が付いたら高校生になっていた……というような何も考えずにのほほんと生きてきた亮平が、父親やその周りの大人たちに感化されて成長していく物語。  ある日父親が若い頃は『ピアニストを目指していた』という事を知った亮平は『何故その夢を父親が諦めたのか?』という理由を知ろうとする。  それは亮平にも係わる藤崎家の因縁が原因だった。 それを知った亮平は自らもピアニストを目指すことを決意するが、流石に16年間も無駄飯を食ってきた高校生だけあって考えがヌルイ。脇がアマイ。なかなか前に進めない。   幼馴染の冴子や宏美などに振り回されながら、自分の道を模索する高校生活が始まる。 ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・オーケストラそしてスコッチウィスキーや酒がやたらと出てくる小説でもある。主人公がヌルイだけあってなかなか音楽の話までたどり着けないが、8話あたりからそれなりに出てくる模様。若干ファンタージ要素もある模様だが、だからと言って異世界に転生したりすることは間違ってもないと思われる。

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

Black/White

RU
ライト文芸
◎あらすじ代わりの人物紹介 ロイ・ベッティ  本編の主人公。  作者の中二的ナニカを凝縮させた、受難なチートキャラ。  物語開始時点での年齢は12歳ぐらい。出生がはっきりしていないので、正確な年齢は本人も知らない設定。(中二的ナニカ例1)  陶磁器のような白い肌、宝石のようなペイルグリーンの瞳、艷やかな黒髪、赤い唇…とゆー、白雪姫が緑色の目になったような少年。(中二的ナニカ例2)  その美貌故に、好色家なモンテカルロ氏に玩具にされ、物覚えが良かったので色々仕込まれ、暗殺術に長けている。(中二的ナニカ例3) アレックス・グレイス  本編の核になる "ヒーロー"。  ライトブラウンの髪と、色素の薄いアイスブルーの瞳を持つ、銀縁眼鏡のイケメン。  潜入時の偽名はヴァレンタイン。20代後半(まだ30にはなってない)。  階級は警部補。クールぶってる人情家。 ハロルド "ハリー"・マクミラン  アレックスの後輩刑事。階級は巡査部長。  潜入時の偽名はラザフォード。金髪碧眼とゆー素材だけならイケメンなのに、なぜかフツメン。  20代前半だけど妻帯者。アレックスの妹と結婚していて、近く子供も生まれる。  本編では、一度たりとも "ハロルド" と呼ばれた事が無い。  性格が優しいので、刑事としてはギリギリ及第点。 モンテカルロ  好色家なマフィアのドン…とゆー設定のハズだけど、ビミョ~に "お代官様" に取り入る悪徳商人的な色が濃くなってるキャラ。  小児性愛者だけど、若いオネーチャンもいける "博愛主義者"。  愛人には基本的に薬物を与え、飽きたら人身売買や売春に "払い下げ" して、次の愛人を作る。  ただし、ロイだけはあまりにも便利(暗殺はもちろん、その他雑用をさせるのに)だったので、好みの年齢から過ぎてしまっても手元に置いている。 ◎注意  こちらの作品は、1985年〜2002年までの間、作者が参加していたサークルに掲載していた物の一つです(掲載時期は前半だったはず)。  海外ドラマ沼にハマる前(とゆーか予兆?)時代に、西海岸物へのアコガレと、ティーンエイジの情熱のみで書かれた作品ですので、色々ビミョ~な部分は生温い目で流してください。  こちらの作品は、ベースがBL(主人公であるロイは、アレックスが好き)ですが、NL(ハリーは妻帯者)要素も含まれます。  BLに女性キャラはいらぬと思っていらっしゃる方には、全く向きません。  作者がこれを執筆していた年齢とか、掲載していたサークル誌への気遣い(?)とかイロイロあって、濡れ場はありません(匂わせ程度は有り)。  軽微な暴力表現と、欠損表現が含まれます。  表紙絵は葵浩様。  フリースペースに、サイトのリンクを貼ってあります。

大江戸ロミオ&ジュリエット

佐倉 蘭
歴史・時代
★第2回ベリーズカフェ恋愛ファンタジー小説大賞 最終選考作品★ 公方(将軍)様のお膝元、江戸の町を守るのは犬猿の仲の「北町奉行所」と「南町奉行所」。 関係改善のため北町奉行所の「北町小町」志鶴と南町奉行所の「浮世絵与力」松波 多聞の縁組が御奉行様より命じられる。 だが、志鶴は父から「三年、辛抱せよ」と言われ、出戻れば胸に秘めた身分違いの恋しい人と夫婦になれると思い、意に添わぬ祝言を挙げる決意をしたのだった……

Trigger

猫蕎麦
ライト文芸
表題作Triggerを先頭に、ちょっとした短編を書いていきます。 (※英語版は素人のもので大量に間違いがあると思われますがご了承ください。それと、日本語版と英語版では少し表現が変わってます。しかし基本は英語を訳しているので、日本語だと不自然な表現が多いです。ご了承ください。) ーTriggerー ちょっとヤバい能力を持つ少年のある朝のお話。 英語版と日本語版あります。 ーPlan Aー 病室で目覚めた主人公ジェレットは一切の記憶を失っていた……! 英語版(途中まで)と日本語版あります。 ─Contrail─ いつもの朝。スクールバスが崖から転落し、ニーナだけが生き残った。だが落ちた先は、血塗られた家だった。 伏線もあるので、じっくり読んでみるとより面白いかもです!感想やアドバイスください。

あの頃のまま、君と眠りたい

光月海愛(コミカライズ配信中★書籍発売中
ライト文芸
美海(みう) 16才。 好きなモノ、 ゲーム全般。 ちょっと昔のアニメ、ゲームキャラ。 チョコレート、ブルーベリー味のガム。 嫌いなモノ、 温めた牛乳、勉強、虫、兄の頭脳、 そして、夜。 こんなに科学も医学も進歩した世の中なのに、私は今夜も睡魔と縁がない。 ーー颯斗(はやと)くん、 君が現れなかったら、私はずっと、夜が大嫌いだったかもしれない。 ※この作品はエブリスタで完結したものを修正して載せていきます。 現在、エブリスタにもアルファポリス公開。

鮮血への一撃

ユキトヒカリ
ライト文芸
ある、ひとりの青年に潜む狂気と顛末を、多角的に考察してゆく物語。

君の夏になりたい

辰巳劫生
ライト文芸
月曜日金曜日の週2回午前10時更新です。 過去から飛んで現代に来てしまった男子高校生"葵葉"はタイムスリップした先である女子高生に拾われ、そこで生活をする事になる。それを見た女子高生の幼なじみ男子"日々希"の気持ちが少しずつ揺れ動く。60年前の過去で行方が消えた父親の記憶が少しずつ甦るのはなぜ…60年前の親友が現代に…?過去に戻るための鍵はなんなんだ… 時を超えた恋愛物語です😊

処理中です...