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第5章 誰のものでもない私…
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「いや、あの、え~と」
あまりの迫力に、灯里の方が気圧されて、言葉が詰まって出て来ない。
それを納得した、と勘違いしたのか、お隣さんはすっかり気をよくして
灯里を説得するように言う。
「そりゃあ、やっぱり初めてのお産は…慣れてないのもあるし、
お母さんに手伝ってもらった方が、絶対いいわよぉ」
今の人には、お節介かもしれないけどねぇ~
歌うように言いながらも、好奇心でぱんぱんのキラキラした目を、
灯里に向ける。
なんでこの人に…ここまで言われるのだろう…
段々灯里は、ムカムカしてくる。
「やっぱりね、実家のお母さんの方が、気がねしなくてすむから…
甘えられる時は、しっかり甘えなくっちゃあ」
そんなことを言う。
「何にも知らないくせに…」
ついに、ポソリと本音が出る。
「えっ?」
お隣さんは、一瞬キョトンとして、何を言ってるの、という顔になる。
だけど灯里は「別に…」とすぐに、口をつぐむと、
まだキョトンとした顔をしている、お隣さんを置いて、
そのすきに、ドアのすき間に、スルリと身体をすべり込ませた。
(それにしても…なんて、お節介な人なんだろう…)
さすがの灯里も、ヘキエキとしていた。
もちろん親切心から言っている、というのはよくわかるけれど…
(半分、好奇心からとはいえ)
それは、あの人のことを、知らないから…
彼女はそう思っていた。
灯里にとって、母親は、常に側にいる存在ではなかった。
病気だ…と聞いてはいたけれど、
子供にそれを理解しろ、というのは、どだい無理な話だったのだ。
大きくなれば、それなりに理解は出来たけれど、
それで帳消しになるほど、自分は出来た人間ではない、と彼女は思っていた。
その代わり…いつも一緒にいてくれたのが、アリサとその家族だ。
アリサの弟などは、灯里のことを《姉貴》と呼ぶほど、
なついてくれた。
(せめて…あの子の家に、生まれたかったなぁ)
かなうはずもないことを、つい思ってしまうのだ。
あまりの迫力に、灯里の方が気圧されて、言葉が詰まって出て来ない。
それを納得した、と勘違いしたのか、お隣さんはすっかり気をよくして
灯里を説得するように言う。
「そりゃあ、やっぱり初めてのお産は…慣れてないのもあるし、
お母さんに手伝ってもらった方が、絶対いいわよぉ」
今の人には、お節介かもしれないけどねぇ~
歌うように言いながらも、好奇心でぱんぱんのキラキラした目を、
灯里に向ける。
なんでこの人に…ここまで言われるのだろう…
段々灯里は、ムカムカしてくる。
「やっぱりね、実家のお母さんの方が、気がねしなくてすむから…
甘えられる時は、しっかり甘えなくっちゃあ」
そんなことを言う。
「何にも知らないくせに…」
ついに、ポソリと本音が出る。
「えっ?」
お隣さんは、一瞬キョトンとして、何を言ってるの、という顔になる。
だけど灯里は「別に…」とすぐに、口をつぐむと、
まだキョトンとした顔をしている、お隣さんを置いて、
そのすきに、ドアのすき間に、スルリと身体をすべり込ませた。
(それにしても…なんて、お節介な人なんだろう…)
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もちろん親切心から言っている、というのはよくわかるけれど…
(半分、好奇心からとはいえ)
それは、あの人のことを、知らないから…
彼女はそう思っていた。
灯里にとって、母親は、常に側にいる存在ではなかった。
病気だ…と聞いてはいたけれど、
子供にそれを理解しろ、というのは、どだい無理な話だったのだ。
大きくなれば、それなりに理解は出来たけれど、
それで帳消しになるほど、自分は出来た人間ではない、と彼女は思っていた。
その代わり…いつも一緒にいてくれたのが、アリサとその家族だ。
アリサの弟などは、灯里のことを《姉貴》と呼ぶほど、
なついてくれた。
(せめて…あの子の家に、生まれたかったなぁ)
かなうはずもないことを、つい思ってしまうのだ。
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