ダンナ様はエスパー？

第4章 まさかの奇跡…

４８

「おかえりなさい」
　先に気が付いたのは、アリサだった。
「えっ、いつからいたの？」
まさか、自分たちの会話、聞かれた？
ビクリとして、灯里は振り返る。
それにしても、まったく気配を感じなかったなぁ～と思う。
「さっきから」
何だか、まずいタイミングだったのか…
とばかりに、久志は「見つかっちゃったかぁ」と困ったように
頭をかいた。

「ごめんね、アカリ…
　ボク、何にも気付いて上げられなくて…」
　灯里と目が合うと、すぐに久志が申し訳なさそうにうなだれる。
「そんなこと、ない」
おかえりなさいと言うのも忘れて、灯里は困った顔になる。
　見つめ合う2人を見ると、アリサはすばやく身をひるがえして
「私、帰るね。
　あとは、2人でどうぞ」
灯里のエプロンをはずすと、彼女に手渡し、そそくさと自分のカバンを
手に取る。
「ありがとう！」
その姿に向かって、久志は声をかけた。


「すわって」
　玄関のカギを閉めると、あらためて久志は灯里の肩を押す。
素直にそれに従うと、
この人は一体、何を話すつもりなのだろう…と、
珍しく彼女も緊張してきた。
「ボク…君のこと、わかってあげていなかったんだね」
もう1度彼は、少し寂しそうに彼女に向かって言う。
彼女は黙って頭を振る。
「そんなこと、ない。
　もともと私が、ワガママなのが、いけないの…」
そう言って、顔をゆがめる。

　こんな風に、もめることがあっても、2人はケンカすることがないのだ。
それがいいのだろうけれど、少し物足りない気もする…
灯里はすぐに顔を上げると
「ごめんなさい！
　みんなは悪くないのよ。
　悪いのは…私よ」と、あらためて頭を下げた。