ダンナ様はエスパー？

第4章 まさかの奇跡…

３０

　　そんなに甘やかされて、いいのかしら…
嬉しいけれど、何だか自分が、とんでもなく役立たずのような気がして、
とても情けなくなってしまう。
「とにかく今日は、ゆっくりしてて！
　また倒れたら、大変だ」
久志は大げさに、目をむくと
「たまには、ボクにもさせて！」
親指を突き出した。
「ありがとう」
そう言うと、今度は素直に、椅子に腰かける。
「頼むから…安定期に入るまで、おとなしくしてくれ」
諭すように言うと、
「ボクだってね、独身の頃は、料理くらいは、してたんだぞ」
自慢するように、そう言った。

　こんなに甘えても、大丈夫なのかなぁ…
灯里が心配するくらい、久志は張りきっていた。
ワイシャツの上に、エプロンかけて、いそいそと動き回る姿は、
見ていて幸せな気持になる。
でも…無理をしなくてもいいのに…と、
灯里は、そう思う。
「そろそろ、行かなくちゃ」
さすがに遅刻してしまう…と、灯里が、声をかけると
「休みをとればよかった」
久志は悔しがる。
「そんな…無理しなくても…」と言うと、
あわてて身支度を始める。
「いい？
　帰ったら、掃除機かけるからね！
　洗い物も置いてて、いいから！」
ネクタイを閉めながらも、彼女に向かって声をかける。
「いいんだってばぁ～
　病気じゃあないんだから」
クスクスと笑う。
それでも灯里が心配なのか、
「いい？
　買い物は、言ってくれたら、するから！
　何にもしなくていいから！
　寝ててよ！」
念押しするように、そう言うと
ポンポンと灯里の頭をなでた。
「いい？お願いだから、おとなしくしてて！」
そう言い残すと、あわてて飛び出して行った。