ダンナ様はエスパー？

第4章 まさかの奇跡…

１７

　　お隣さんの前で、思わず見栄を張ったものの…
どうしたらいい、という具体的な案は、今のところは何もない。
久志は灯里の頭を、ポンポンと優しく撫でると…
「ごめんねぇ～灯里に、そんな思いをさせていたなんて！」
優しく謝るのだった。

「で、母さんはどうしてる？」
ようやく廊下へと、足を踏み入れる。
「今、お風呂に入っているわ」
念のため、小声でささやいた。
2人で連れ立って行くと…居間の方からテレビの音がする。
「あれ？つけていたっけ？」
驚いた顔をして、のぞき込むと…
「あらっ！久志、おかえり」
　風呂上がりのお姑さんが、テレビの前のソファで、くつろいでいた。


（あっ、もう出てたぁ～）
灯里は少しガッカリとする。
もう少しゆっくりと、久志と2人きりで、話が出来ると思って
いたからだ。
ややガッカリしている灯里に、お姑さんは
「あら、灯里さん。
　お出迎えしてくれたの？」
すっかりご機嫌の顔で、ニッコリと笑う。
悪意はもちろんないと思うのだが、何だか嫌味を言われている
ような気がした。
　普段はとってもおしゃれで、お気に入りのリビングも…
お姑さんがテレビをつけて、時折笑っていたりするのを見ると、
なんだかまるで、自分の居場所を奪われたような、
息苦しさを覚える。
「ご飯…食べる？」
何かしなくちゃ、とやけに張り切った声を出すと、
「あっ、いい、いい」
あくまでも、灯里に無理をさせたくないせいか、
久志自身がキッチンにまで、やって来る。

　どこまでも、優しいダンナさんだ…
灯里は誇らしい気持ちで、一杯になった。