ダンナ様はエスパー？

第3章 彼は無敵なダンナ様！

１５

「なんだ、本当に帰っちゃったの？」
　翌朝玄関先で、久志を見送っていると、ドアの向こうから
お隣さんと目が合った。
（また、見てたの？）
（いつから？）
　毎度毎度、呆れてしまう灯里だ。
「はい、まぁ、そうです」
それでも返事は一応したものの…
だけどあのお姑さんのことだ。
本当に帰ったのかどうかは、怪しいものだ…
まだ灯里は、半信半疑だ。

　なぜなら昨日までのびのびと、ここの暮らしを彼女は
満喫していたからだ。
すっかり羽を伸ばしているように、見えた。
灯里に文句は言うものの…
3度の食事は、1人で作らなくていいし、
洗濯も、掃除も、灯里まかせで…
何をしていたかと言うと、テレビを見ていたり、
灯里の邪魔をしてみたり、
1人でプラリと出かけてみたり…
（もっとも、イチイチ灯里のすることには、チェックが入ったものの…）
この嵐のような数日間は、灯里にとっては地獄のようだったけれど、
お姑さんには、上げ膳据え膳だったことだろう…
（大変だったなぁ～）
灯里はしみじみと思い起こす。
いつもの倍、気を使い、
いつもの倍、大変だった…
自分で自分に、褒めてやりたい…と思っていた。

「なぁんだ！つまんないなぁ～」
意外なことに、お隣さんは、お姑さんとの言い合いを
楽しみにしていたようだ。
まさかこの人は…お姑さんとやり合うのを、心の底から
楽しんでいるのだろうか？
（なんたる、暇人！）
灯里はそれに気付くと、心底呆れていた。
「でもまぁ、あなた…
　よくあんなお姑さんの相手、やってたわねぇ～」
むしろ楽しそうに言うので
（ちょっと、人の事、言えるの？）
思わず彼女はギュッと唇をかんだ。