ダンナ様はエスパー？

第1章 甘い生活？

１３

「あっ、友達に会うの？
　いいよ、行っておいで！」
　何だか彼は、とても嬉しそう。
まるで自分のことのように、喜んでいるのだ。
「ここのとこ、ずっと…連絡とってなかったんだろ？
　ゆっくりしておいで。
　ボクは適当にするから、大丈夫！」
穏やかな声で、優しい目をして灯里を見つめる。
「なんだったら、お小遣い、あげようか？」
申し訳ないぐらい、ニコニコしている。
（なんでそんなに、優しいの？）
何も後ろ暗いところはないけれど、つい戸惑ってしまう。
（これじゃあ、久志さんに、甘えてしまう！）
まるでお父さんみたい…
いや、おじいちゃんか？
「いいの、大丈夫。ありがとう」
どこまでも甘やかしてくれる久志さん。
今も微塵も文句を言うこともなく…
ニコニコと微笑んでいる。

　何だかやっぱり、これでは奥さんというよりは、子供扱いだ。
だけど彼は、そんなことを１ミリも考えてはいないようで、
彼女を大切に思う気持ちだけは、十分伝わってくる。
（これでいいのだろうか？）
灯里はふいに、そう思った。


「あんた、文句を言うと…バチが当たるわよ」
先ほど彼のことを話したら、早速会いに来た親友のアリサに
言われてしまった。
「それは、わかってるわよぉ」
ややうんざりとした顔で、彼女は言う。
このところアリサがしつこく、
「新婚家庭の実態が知りたいから…
　後学のためにも、見に行ってもいい？」
と、ことあるごとに、言ってくるのだ。
半分以上…というよりも、９０％くらいの人が、おそらくは
興味本位なのだ。
だからつい、
「うちの家は…あなたの好奇心を満たすために、
　あるんじゃあないのよ！」
思わず灯里は、キッパリとそう言った。