シンデレラの娘たち

daisysacky

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第2章 あなたはだぁれ?

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 それは、初めてのことだった。
パパやママの制止を振り切って、気が付いたら、真っ暗な通りに
出ていた。
柚はハッとして、足を止めると、ここはどこだろう?と立ちすくむ。
足元には、ぶかぶかのパパのサンダルをつっかけている。
「なんで、パパの?」
どおりで、歩きにくかったわけだ。
すぐに脱ぎ捨てよう、と思ったけれど、そうするとはだしになる、
と気付いて、しかたなく思いとどまる。

「なんでママ…あんな顔をするのよ」
 いつもは優しいママが、あんな風に柚を見るなんて!
自分を責めるような目で、柚を見ていたことに…
柚の幼い心は、傷ついていた。
「なんで、こんなの…」
 いつの間にか、ガラスの靴ではなく、なぜかそのカケラを握り締めている
ことに気が付く。
それは、ガラスの靴のカカトの部分だ。
走っている最中に、壊れたのか?
捨てよう…と、道路に放り投げようとして、それがキラリと光を放つのを見て、
すぐに思いとどまる。
「ママ…泣いてた」
 よっぽどママにとって、大切な物だったんだ。
(せめて、ボンドでくっつけてあげよう)
パパがよく、
「コイツはよく、くっつくんだ」
と自慢していた、アロンアルファを思い出して、そのかけらをポケットに
突っ込む。

 もちろん端から、家出するつもりなどなかったので…
家に帰ろう、と柚は辺りを見まわす。
 シンと静まり返った通りの側には、ボンヤリと自動販売機の灯りが、
まるで灯台のように、そこだけポッと照らしている。
「早く、おうちに帰らなくちゃ」
そう思って、光に吸い寄せられるように、その自動販売機に近づいた。
 
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