シンデレラの娘たち

daisysacky

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第1章 ママの秘密

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 母親に言われるまで、気付かなかった。
ガラスの靴のカカトの部分に…
大きなヒビが走って、少し欠けている。
「あっ」
さっき転んだ時に、どこかでぶつけて、たぶん折れたんだ…
そのことに気付くと、柚は急にシュンとしてうつむく。
「あなたももう、赤ちゃんじゃないんだから…
 わかるでしょ?
 人の物は、たとえボロ布であっても、触ってはいけないのよ」

 こんなママの顏を、初めて見た…
柚は驚いて、その場で固まる。
母親はまっすぐに、柚を見つめると
「これは、もう…戻らないわ」
悲しそうにそう言うと、再び柚に見せる。
 さっきまで、「ごめんなさい」と言うつもりだった柚は、
何でこんなに、怒られるのだろう…と思うと、
何だか急に悲しくなってくる。
「ママなんて、きらい!」
そうひと声叫ぶと…
パッとママから靴をひったくって、その場を駆け出して行く。

「ユウ!こら、待ちなさい!」
 ママがあわてて、その小さな背中に向かって叫ぶけれど…
柚はまっすぐに、ドアに突進すると、目の前のサンダルに、つま先を
引っかけて、バン!と乱暴にドアを閉めて、暗闇に向かって
飛び出して行った。
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