デブよ、さらば！

第９章 危険な思いつき つい、魔がさして

３１

「ということは・・・全く食べない、というわけでは
　ないのね？」
　思わず口をはさむと、サヤちゃんママは大きく
うなづき、
「食べれるものは、食べる。
　食べられないものは、工夫する。
　ただ、それだけよ！」

　簡単にいうけれど、それって、そんなに簡単に
出来るもの？
空美は、やはり引っかかった。
それで、ホントにうまくいくの？

空美の表情を見て取ると、
「あら、信じていないわね？」
サヤちゃんママは、すぐに声をあげた。
「そんなに信じられないなら・・・
　元気になったら、やってみましょ」
明るく言ってのける。
でも・・・と空美。
「ホントに、そんなに簡単に、うまくいくもの？」
思わず、本音がポロリ・・・
「あら、疑うの？」
　サヤちゃんママを見ていると、ホントにそれだけで
痩せたとは、思えない・・・
まるで、それ以外に、特別なこと・・・サプリとか、
トレーニングとか、減量・・・とか。
何かそれ以外に、特別なことをやって、痩せたのでは・・・という思いは、拭い去れない。
しいて言えば・・・まだ若い、ということ。

空美が、あれこれと考えていると、サヤちゃんママは、じぃっと空美の顔をうかがって、にっこりと笑う。
「そうね、わかった」
と言うと、
「秘密は、またおいおい教えるわ」
と言った。
それから「よし」と立ち上がると、
「とりあえず、お腹に優しいものを、食べましょ」
と言って、台所へと向かう。
幸い、コンロには、鍋が乗っていて、のぞいてみたら、海美が今朝作っておいた、お味噌汁の残りがあった。
「晩御飯はどうしてるの？」
サヤちゃんママが聞くと、
「ショウちゃんが買い物して、帰って来るわ。
　それか、海美が仕事帰りに、買い物してきてくれるから、それで作ってもらうの」

　空美はまだ、病み上がり。
「しかたないわね～」と言って、サヤちゃんママは、
冷蔵庫をのぞいた。