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scene 1 12時の鐘が鳴り終わる前に
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「おそい!」
ねずみの御者が、キーキー声を上げて、文句を言います。エラは、まだ息をはずませながら、
「ごめんなさい」と言うと、
「あら、ガラスの靴は?」
目ざといトカゲは聞きました。
エラはようやく足元を見ると・・・
いつの間にか、左足がハダシになっていました。
「えっ?」と言うと、
そういえば、ボールルームを走り抜けて、階段を
駆け下りる時に、靴を階段のじゅうたんに取られて、
脱げたことを思い出しました。
なにしろあの靴は、ガラスでできているから、ツルツルとすべるし、固いし、ぬげやすいのです。
「さっさときりあげて来れば、よかったのに・・・」
みんなが一斉に、責めるけれど・・・
その間も、時の鐘は鳴り響きます。
(一体、何回鳴るのかしら?)
チラリと思うけれど、こうしてる場合じゃありません。
「それよりも!」
エラは、あわてたように言います。
「早く出発しましょ!」
おう、そうだった・・・
ネズミやトカゲの御者たちは、あわてて所定の位置に
おさまると、馬車は急ピッチに進みます。
もちろん、これもみんな動物が魔法で変装しているもの。
早くしないと、魔法がとけて、とけたらすべて、
水の泡・・・
それに!
もしかしたら、王子の追っても、迫って来るやもしれません。
気持ちは焦るけれど、それでもふとエラはお城の見える方向を振り返り、
「だけど・・・とっても素敵な舞踏会だったわ」
と、うっとりしたように言いました。
そんな風に、しみじみと噛みしめている間も、
鐘は鳴り響きます。
馬車は、きしみながら、全速力で走ります。
御者の台が・・・
馬車の窓枠が・・・
車輪のフレームが・・・
ボロボロと外れ始め、
最後の鐘の音が鳴り響く時・・・
エラは、手に汗握り締めながら、
「神様、お願い!
どうか間に合わせて!
せめて、あの人には、見つかりませんように!」
必死に祈りましたが・・・
突然、ガタン!と大きな音がして、車輪が、木の根っこに、吹き飛ばされました。
その瞬間、かぼちゃに大きな亀裂が走り、その反動で、エラは馬車から振り落とされたのでした。
ねずみの御者が、キーキー声を上げて、文句を言います。エラは、まだ息をはずませながら、
「ごめんなさい」と言うと、
「あら、ガラスの靴は?」
目ざといトカゲは聞きました。
エラはようやく足元を見ると・・・
いつの間にか、左足がハダシになっていました。
「えっ?」と言うと、
そういえば、ボールルームを走り抜けて、階段を
駆け下りる時に、靴を階段のじゅうたんに取られて、
脱げたことを思い出しました。
なにしろあの靴は、ガラスでできているから、ツルツルとすべるし、固いし、ぬげやすいのです。
「さっさときりあげて来れば、よかったのに・・・」
みんなが一斉に、責めるけれど・・・
その間も、時の鐘は鳴り響きます。
(一体、何回鳴るのかしら?)
チラリと思うけれど、こうしてる場合じゃありません。
「それよりも!」
エラは、あわてたように言います。
「早く出発しましょ!」
おう、そうだった・・・
ネズミやトカゲの御者たちは、あわてて所定の位置に
おさまると、馬車は急ピッチに進みます。
もちろん、これもみんな動物が魔法で変装しているもの。
早くしないと、魔法がとけて、とけたらすべて、
水の泡・・・
それに!
もしかしたら、王子の追っても、迫って来るやもしれません。
気持ちは焦るけれど、それでもふとエラはお城の見える方向を振り返り、
「だけど・・・とっても素敵な舞踏会だったわ」
と、うっとりしたように言いました。
そんな風に、しみじみと噛みしめている間も、
鐘は鳴り響きます。
馬車は、きしみながら、全速力で走ります。
御者の台が・・・
馬車の窓枠が・・・
車輪のフレームが・・・
ボロボロと外れ始め、
最後の鐘の音が鳴り響く時・・・
エラは、手に汗握り締めながら、
「神様、お願い!
どうか間に合わせて!
せめて、あの人には、見つかりませんように!」
必死に祈りましたが・・・
突然、ガタン!と大きな音がして、車輪が、木の根っこに、吹き飛ばされました。
その瞬間、かぼちゃに大きな亀裂が走り、その反動で、エラは馬車から振り落とされたのでした。
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