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scene 1 12時の鐘が鳴り終わる前に
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どこかで、花火のあがる音も聞こえています。
さすが、最終日にふさわしく、やることもど派手です。王様の、並々ならぬ思いが、ここにも表れているのでしょう・・・
エラは、王子にエスコートされて、これから起きようとすることに、幾分緊張していますが・・・
なにしろ、エラはシンデレラ。
灰かぶりのお姫様。
ここは、自分にとって場違いであることも、重々承知しているのです。
先ほどから、どこぞの姫君たちが、美しい顔をゆがめて、自分のことをにらみつけているのも、肌で
感じていました。
すると、何も知らない王子は、のん気にエラが恥じらっていると、勘違いをして、
「あぁ、あれは、時の鐘ですね・・・」
と、花火を見上げながら、言いました。
そこで、エラは急に我に返り・・・
「えっ?」と、思わず声を上げます。
自分が今置かれている状況に気付いて、あわてて、
「今、何時ですか?」と聞きます。
「何時って・・・12時ですよ」
「12時?」
エラは悲鳴を上げそうになり・・・あわてて窓に近付きます。
王子は、とっさに腕を引こうとして、つんのめりそうになり、エラの足を踏みそうになります。
「これは、失敬!」と言いつつ、まだ彼女の変化に
気が付かず、うっとりと見つめます。
「どこか、静かな場所へ行きませんか?」
「とんでもない!」
エラは、急に真顔になり、きっぱりと言います。
「帰らなくては!」
あわてて手を振りほどこうとしますが、王子は
今度こそ逃がすまい、とがんばっています。
「せめて名前を聞くまでは、放しません」
エラの手を、永久に放すまじ、とグッと握りしめます。
(もう!今急いでるのに!この坊ちゃん、わかってないよ!)
思わず、舌打ちをしたいくらいだけれど、それでも
必死でこらえ、引きつった笑みを浮かべます。
(いい加減に、気付いてよ!)
思わず、叫びたい気持ちを押し凝らして・・・
「せめて、お名前を!」
すがるように言う、王子を見て、とっさに出たのが
「シ・・・シンデレラです・・・」
思わず、継母に呼ばれているその名を、口にしました。
「シンデレラ?ずいぶん、変わった名前だ。
どこの生まれですか?」
頭をかしげ、うなる王子に、エラは少しいらつきます。
「さぁ、もう満足ですよね?いいから放してください」
王子、ねばろうとするけれど、エラは必死にふりほどいて、スカートのすそを握りしめると、ダッシュの姿勢をとりました。
王子は、その姿を、呆気に取られて見つめると、
「それでは、送りましょう」
と、いくぶん間の抜けた声で、エラに声をかけました。
さすが、最終日にふさわしく、やることもど派手です。王様の、並々ならぬ思いが、ここにも表れているのでしょう・・・
エラは、王子にエスコートされて、これから起きようとすることに、幾分緊張していますが・・・
なにしろ、エラはシンデレラ。
灰かぶりのお姫様。
ここは、自分にとって場違いであることも、重々承知しているのです。
先ほどから、どこぞの姫君たちが、美しい顔をゆがめて、自分のことをにらみつけているのも、肌で
感じていました。
すると、何も知らない王子は、のん気にエラが恥じらっていると、勘違いをして、
「あぁ、あれは、時の鐘ですね・・・」
と、花火を見上げながら、言いました。
そこで、エラは急に我に返り・・・
「えっ?」と、思わず声を上げます。
自分が今置かれている状況に気付いて、あわてて、
「今、何時ですか?」と聞きます。
「何時って・・・12時ですよ」
「12時?」
エラは悲鳴を上げそうになり・・・あわてて窓に近付きます。
王子は、とっさに腕を引こうとして、つんのめりそうになり、エラの足を踏みそうになります。
「これは、失敬!」と言いつつ、まだ彼女の変化に
気が付かず、うっとりと見つめます。
「どこか、静かな場所へ行きませんか?」
「とんでもない!」
エラは、急に真顔になり、きっぱりと言います。
「帰らなくては!」
あわてて手を振りほどこうとしますが、王子は
今度こそ逃がすまい、とがんばっています。
「せめて名前を聞くまでは、放しません」
エラの手を、永久に放すまじ、とグッと握りしめます。
(もう!今急いでるのに!この坊ちゃん、わかってないよ!)
思わず、舌打ちをしたいくらいだけれど、それでも
必死でこらえ、引きつった笑みを浮かべます。
(いい加減に、気付いてよ!)
思わず、叫びたい気持ちを押し凝らして・・・
「せめて、お名前を!」
すがるように言う、王子を見て、とっさに出たのが
「シ・・・シンデレラです・・・」
思わず、継母に呼ばれているその名を、口にしました。
「シンデレラ?ずいぶん、変わった名前だ。
どこの生まれですか?」
頭をかしげ、うなる王子に、エラは少しいらつきます。
「さぁ、もう満足ですよね?いいから放してください」
王子、ねばろうとするけれど、エラは必死にふりほどいて、スカートのすそを握りしめると、ダッシュの姿勢をとりました。
王子は、その姿を、呆気に取られて見つめると、
「それでは、送りましょう」
と、いくぶん間の抜けた声で、エラに声をかけました。
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