ちょっと待ってよ、シンデレラ

daisysacky

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Scene12  シンデレラはガラスの靴をはいて

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   シューヘイが先頭になり、トンネルの中を懐中電灯で照らしだして
います。
「なんだか…雰囲気があるわね、ここ」
まだおそるおそる、カスミが言うと
「そうね」
エラもうなづいて、トンネルの向こうを透かして、見ようとしています。
ピピッピピッ
突然アラーム音が鳴り響きます。
「なに?」
カスミが驚いたように言うと、シューヘイがあわてて
「ごめんごめん」
携帯を取り出し、操作します。
「タイマーをセットしていたんだ」
と言うので、カスミがあわてて
「えっ、今 何時?」
歩く足を止め、シューヘイに聞くと、懐中電灯に腕時計をかざすと、
「55分」と答えます。
「えっ?もうあと5分?」
もう、そんなに?
一同は思わず顔を見合わせました。
エラも急に、落ち着かない気持ちになりました。

「ねぇ…目的地はまだ?」
カスミも不安そうに、誰にともなく聞いて見ると、大家さんは
辺りをキョロキョロ見回すと、
「そろそろ合流地点のはずなんだけどねぇ」
エラたちとは違って、落ち着いた口調で、のどかな
顔をしてそう言いました。
「ねぇ…ホントに着くの?このトンネルで間違いはないの?」
不安そうな顔をして、カスミは大家さんに訴えるけれど、大家さんは少しも
動じる様子はなく大袈裟に肩をすくめると、
「さぁ?そろそろ着くわよ」
鷹揚な様子でそれだけ言うと、大股でワンピースの
裾をゆらゆら揺らして、歩き出します。
カツンカツンカツン…
みんなの足音が、やけに大きく響いています。
あと何分?
ドッキンドッキンドッキンドッキン…
心臓の鼓動が、やけに大きく聞こえてきます。
もうすぐだ…本能的にエラはそう感じます。
何だか、フワッとした、不思議な感じ…
あの渦のような、異様な感覚が、エラのすぐ側に
まで近付いて、こちらに向かって来ているのを、
肌で感じます。
「なんだか…怖いわ」
やっぱり、カスミは先程からずっと震えるようにきて、エラに
くっつくようにしています。
もうすぐだ…
あと少しで、すべてが終わる…
そんな不思議な感覚に心を揺さぶられながら、
エラはぐっと手を握りしめました。

 シューヘイの持つ懐中電灯の輪が、真っ暗なトンネルの中を、
まっすぐに照らし出しています。
これは現実なの?
ふと、エラは思います。
こんなトンネル…本当にあるのだろうか…と。
トンネルの向こう側さえも、何も見えません。
もしも昼間に見るのなら、まったく違う風景なのかも
しえませんが…
シューヘイを先頭に、エラ、カスミ、大家さん、信子の順に
歩いて行きます。

 永久に、このまま真っ暗闇の中を歩き続けるのかあ~と、
そんな想いに捕らわれていると、ようやくチラチラと
カンテラのような灯りのようなものが、見えてきました。
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