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Scene12 シンデレラはガラスの靴をはいて
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なんだかとても寂しそうな顔…そんなシューヘイの顔を見ると、
なぜだかエラの胸が、チクン…とかすかな痛みを感じます。
「え…」
シューヘイの言葉に、エラは言葉につまり、うまく話せません。
「そうなるのかしら…」
オズオズと、ためらいがちにそう言うと、なんだかひどく、
申し訳ないような、心苦しい気持ちでいっぱいになりました。
エラは恋愛のエキスパートではないので、こういう方面は、
全くの初心者です。
今まで…エラはシューヘイのことは、意識してこなかったので、
シューヘイの視線が、なんだかとても痛い…
あれほど この日が来るのを、待ちわびていた、というのに…
どこかよそ事のような、気がするのです。
ボンヤリと自分の心境の変化に、とまどいます。
困った顏のエラを見て、シューヘイは頭をくしゃっとなでると、
「エミちゃんてさぁ~ホントーはお姫様だったんだなぁ」
ポツンと、しかし穏やかな声で、シューヘイが言うのを、
それはどういう意味で、言ってるのかなぁ~と、エラは思います。
それは…シューヘイが、エラがシンデレラである、ということを、
知っているのか、ということなのか…
それとも単に、たとえ話だったというのか…
さらに1体それを誰から聞いたのか…とアレコレ考えていると、
「君はホントーに、遠いところから、来たんだねぇ」
あえて深く追求することなく、シューヘイは静かに答えます。
遠くには、ボンヤリとトンネルが見えています…
さらに後ろを振り返ると、ここまで乗って来た車には、
カスミ達は、2人のことを、待ち構えているのです…
振り返るエラの側に近付くと、
「どうするの?ホントーに帰ってしまうの?」
それでなお…シューヘイは聞かずにはいられないようで、寂しそうに
微笑みました。
ためらうようにエラは、静かに頭を振り返すと、
「実はね…このまま、ここに残っても、いいかなぁと少し思って
いるんだぁ」
思わず言葉が、滑り出てきました。
言ってしまった…これが本当の気持ちなのだ…と、あらためて
思うのです。
「だけど…」と、静かにシューヘイが続けます。
「だけどこれが…家に蹴る最後のチャンスなんでしょ?」
決して責めるでもなく、押し付けるでもなく、淡々とシューヘイは
言いました。
するとエラはあらためて思うのです…
この人は、本当に真面目に、自分の事を心配してくれているのだ…と。
エラははじめて気付きます。
そして、そういえば…と思い返します。
この人はいつも、自分のことを、こうして見守っていてくれたのだ‥と。
困った時には、いつでも助けに気付いたら来てくれて、
側にいてくれたのだ…と。
トンネルはここから、少し行ったところにあります。
エラはシューヘイから目をそらすと、何気ない調子で、
「車でトンネルに入るの?」
と、トンネルに目をやったまま聞きました。
するとシューヘイは、さっきまでの話を蒸し返すことなく、
「いや…トンネルの手前から歩いて行くみたいだ」
そう静かに言うと、エラの肩に軽く手を置きました。
力をこめたわけでもないのに、エラにはそれが…
やけに重たくて、熱く感じられました。
それでも、その手を払いのけることなく、
「でも…こんなとこに置いて、邪魔にはならないの?」
特に気にしないフリをして、聞きました。
「大丈夫…普段から、車の往来が少ないから」
そう言うシューヘイは、何か物言いたげな表情で、
エラを見つめます。
だけども、わざと、それに気付かないフリをしていると、
「ねぇ、トンネルを抜けると、何があるの?」
重ねてシューヘイが聞いてきます。
エラは軽くその視線をそらすと、
「さぁ、どうかしらねぇ」
ボンヤリと、トンネルの方を見つめました。
なぜだかエラの胸が、チクン…とかすかな痛みを感じます。
「え…」
シューヘイの言葉に、エラは言葉につまり、うまく話せません。
「そうなるのかしら…」
オズオズと、ためらいがちにそう言うと、なんだかひどく、
申し訳ないような、心苦しい気持ちでいっぱいになりました。
エラは恋愛のエキスパートではないので、こういう方面は、
全くの初心者です。
今まで…エラはシューヘイのことは、意識してこなかったので、
シューヘイの視線が、なんだかとても痛い…
あれほど この日が来るのを、待ちわびていた、というのに…
どこかよそ事のような、気がするのです。
ボンヤリと自分の心境の変化に、とまどいます。
困った顏のエラを見て、シューヘイは頭をくしゃっとなでると、
「エミちゃんてさぁ~ホントーはお姫様だったんだなぁ」
ポツンと、しかし穏やかな声で、シューヘイが言うのを、
それはどういう意味で、言ってるのかなぁ~と、エラは思います。
それは…シューヘイが、エラがシンデレラである、ということを、
知っているのか、ということなのか…
それとも単に、たとえ話だったというのか…
さらに1体それを誰から聞いたのか…とアレコレ考えていると、
「君はホントーに、遠いところから、来たんだねぇ」
あえて深く追求することなく、シューヘイは静かに答えます。
遠くには、ボンヤリとトンネルが見えています…
さらに後ろを振り返ると、ここまで乗って来た車には、
カスミ達は、2人のことを、待ち構えているのです…
振り返るエラの側に近付くと、
「どうするの?ホントーに帰ってしまうの?」
それでなお…シューヘイは聞かずにはいられないようで、寂しそうに
微笑みました。
ためらうようにエラは、静かに頭を振り返すと、
「実はね…このまま、ここに残っても、いいかなぁと少し思って
いるんだぁ」
思わず言葉が、滑り出てきました。
言ってしまった…これが本当の気持ちなのだ…と、あらためて
思うのです。
「だけど…」と、静かにシューヘイが続けます。
「だけどこれが…家に蹴る最後のチャンスなんでしょ?」
決して責めるでもなく、押し付けるでもなく、淡々とシューヘイは
言いました。
するとエラはあらためて思うのです…
この人は、本当に真面目に、自分の事を心配してくれているのだ…と。
エラははじめて気付きます。
そして、そういえば…と思い返します。
この人はいつも、自分のことを、こうして見守っていてくれたのだ‥と。
困った時には、いつでも助けに気付いたら来てくれて、
側にいてくれたのだ…と。
トンネルはここから、少し行ったところにあります。
エラはシューヘイから目をそらすと、何気ない調子で、
「車でトンネルに入るの?」
と、トンネルに目をやったまま聞きました。
するとシューヘイは、さっきまでの話を蒸し返すことなく、
「いや…トンネルの手前から歩いて行くみたいだ」
そう静かに言うと、エラの肩に軽く手を置きました。
力をこめたわけでもないのに、エラにはそれが…
やけに重たくて、熱く感じられました。
それでも、その手を払いのけることなく、
「でも…こんなとこに置いて、邪魔にはならないの?」
特に気にしないフリをして、聞きました。
「大丈夫…普段から、車の往来が少ないから」
そう言うシューヘイは、何か物言いたげな表情で、
エラを見つめます。
だけども、わざと、それに気付かないフリをしていると、
「ねぇ、トンネルを抜けると、何があるの?」
重ねてシューヘイが聞いてきます。
エラは軽くその視線をそらすと、
「さぁ、どうかしらねぇ」
ボンヤリと、トンネルの方を見つめました。
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