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Scene12  シンデレラはガラスの靴をはいて

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  大家さんもカスミも、黙ったまま、何とも物言いたそうな顔を
しています…
まさかここでみんなとお別れ?
まさか1人で、トンネルを歩いてくぐれと言うの?
エラが戸惑っていると…
「どうぞ」
あっさりと大家さんは、手を広げました。
「一応ね…30分前になったら、戻って来てよ」
今度は、シューヘイに向かって言います。
それを聞いて、エラはすこし安心します。
ここへきて…少しおじげついてきたようです。
「どうぞどうぞ」
なんだかカスミはにやにやして、シューヘイを見ています。
「そんなんじゃないってば!」
シューヘイは照れたように、頭をかきました。
「時間があんまりないし、さぁ、早く」

 運転席のドアを開けると、エラのいる後部座席のドアを
すかさず開きます。
エラはそれでもまだ…なんでこんなとこで、シューヘイと?
と、全くわけがわかっていません。
今までさんざんお世話になっているのだから…と、
ここは黙って、ドアの外へ出ました。
 外は、暗闇に包まれていて、向こうの方は、まったく
何も見えません…
こんな時間に、出かけることがなかったので、エラはなんだか・・・
この世界にポツンと、置いてきぼりになったような…
心細い気持ちになりました。

 車の外に出ると、シューヘイはさりげなく、エラの手を引くと、
車から、少し離れた場所へ、エラを連れ出します。
エラは辺りを見まわして、少しおびえた顔をします。
「なんだか寂しいところねぇ」
初めて見る景色に、ますます心細さを覚えて、シューヘイの手を
ギュッと握りしめました。
「大丈夫だよ」
明るくシューヘイが声をかけると、エラに向かいニッコリと微笑み
ました。
「そうだねぇ。明かりもほとんどないしね」
クルリと後ろを振り返ります。
街からはずいぶん離れた場所です。
たしかにここなら…突然不思議なトンネルが、口を開いたとしても、
誰にも見つからないかもしれないなぁ~と思うのです。
それともほんの、一時的なことなのかもしれませんが…
確かにそんな気がしてきたのです。
シューヘイは、深くて暗いトンネルを振り向くと…
「ホントーに、反対側の国にまで、つながっていそうなトンネルだね」
と、にこやかな笑顔で言います。
そうしてふいに、またじぃっと見て、
「本当にどこかへ行ってしまうの?」
ためらいがちに、シューヘイは、エラの肩に手を置きました。


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