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Scene12  シンデレラはガラスの靴をはいて

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  コールタールで染まったような暗闇の中を、ヘッドライトが
切り崩すように、光の道筋をつけて、グイグイ吸い込まれていきます。
すでに道筋は、事前チェックをして、把握しているのか、
シューヘイは、迷うことなく、ハンドルを握ります。
空気を察したのか、みんななんとなく、押し黙ったまま、
エラに対して、遠慮がちのムードに、なっていました。
信子が、大家さんの説明を、本当に理解できたのか否かは、
わかりませんが…それでもようやく納得はしたらしく、
おとなしく座っています。
 行きかう車が一切なく、まるで自分たち以外の人間が、
みんな一様に、寝静まっているような…
動いているのは、自分たちだけ…と思わせるような、
不思議な感覚です。
 まるで別世界に迷い込んで、知らずにドライブしているようだわ、と
エラは思うのです。

 みんなの沈黙をかき消すように、ボリュームを絞ったカーラジオからは、
FMが流れています。
「あのね」
突然カスミが口を開きます。
「私達って…ホントについて行って、いいのかなぁ」
頭をかしげて、カスミは後ろの大家さんを振り向きます。
「だって、よくわかんないけどさぁ、エミちゃんにお迎えが
 来るってことでしょ?
 私達が行ったら、お邪魔にならないのかなぁ」
カスミはカスミで…どうやら気にしているようです。
「でも森って…
 そんなとこ、あったぁ~?」
時折考え込むように、目を落とします。
「さぁねぇ。ボクはあんまり興味がないから…」
シューヘイは頭をひねります。
カスミやシューヘイは、この街の生まれではないのですが…
住んでからかなりたつ、というのに、心当たりが悲しいほどない、
と頭をひねります。
「トンネルがあるのは、知ってるけど」
「ふだんは通らないしね」
言い訳のように言うと…
 大家さんは2人の方を、少し真面目な顔になると
「昔から…時々迷子になる人がいる…って、噂があったのよね」
なるほどそれで、心当たりがないのか…と、シューヘイは納得
するのでした。





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