ちょっと待ってよ、シンデレラ

daisysacky

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Scene12  シンデレラはガラスの靴をはいて

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  何を話したらいいのかわからなくて…エラはただ黙って、
大家さんの声に耳を傾けます。
もしかしたら…エラの旅立ちを、みんなで明るく見送ろう…
という集まりなのか、とひそかにエラは思うのです。
 大家さんは、何事かシューヘイにささやくと、
あらかじめ、行先を告げているのか、車はスムーズに
動き出しました。

「なんだか みんなで出かけるの、初めてよね?」
ことさらに明るい声で、カスミはそう言います。
これから、夜中のピクニックにでも出かけるような、
のんびりとした、のん気な口調で。
そう言われればそうだな…エラはうなづきます。
今まで1度も、この街からよそへ、出たことがなかった、と
エラはあらためて、そう思うのです。

「いいかい?トンネルを抜ける手前で降りるからね}
確認するように、大家さんが言うので…
忘れないように、頭の中で繰り返すと、エラは顔をキュッと
引き締めて、
「はい」
真面目な口調で、うなづきました。
だけどどこか、緊張感が辺りを支配して、ピリピリとした
空気が漂っています。
困ったように、車内を見回すと、車のミラーから、
後部座席をのぞき込んでいる、シューヘイと目が合いました。
シューヘイは一瞬、じぃっとエラの顔をのぞき込むと、
目を細めて…
「大丈夫…ここから少し離れてるけど、
 30分もすれば、着くと思うよ」
いつもの優しい声で言いました。

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